改訂新版 世界大百科事典 「経営情報システム」の意味・わかりやすい解説
経営情報システム (けいえいじょうほうシステム)
management information system
経営管理に必要な情報を供給するために,組織内に設定された情報システムをいう。今日では原語の略語であるMIS(ミス)/(エムアイエス)と呼ぶことが多い。経営情報システムが経営管理の用具としてとくに注目されるようになったのは,コンピューターの利用により情報の大量処理が可能となり,また経営管理に必要な状況や予測をより的確に伝える情報が増加したからである。またコンピューターによる情報化の促進は,経営管理の活動の一環として,情報システムが担う役割を鮮明にしたからでもある。この情報システムは,組織体にとってはあたかも人体における神経系統のようなもので,組織の頭脳と各部分あるいは部分と部分,組織の内外の関係の維持や結合の役割を演ずる。しかしこの情報システムは,人体の神経系統と異なり,人為的につくり上げ運用しなければならない。そのために目的を定め,設計し,組織の中にその構成のサブ・システムとして位置づけなければならない。組織のサブ・システムとして設定された情報システムは,組織の全体や各部分の要求によっていろいろな情報システムをつくり上げる。業務管理活動にそったものとしては,生産管理情報システム,販売管理情報システム,財務管理情報システム,人事管理情報システムなどがある。また,統制や測定の組織機能にそって,統制情報システム,測定情報システムが設けられることになる。会計情報システムはこれらシステムと密接な関係をもつ。
経営情報システムは,業務管理や統制機能,測定機能等の諸情報システムの上に立つものであって,全般管理に必要な情報を供給するとともに,経営意思決定を支援する情報システムである。したがって,経営情報システムに要請される機能は,まず全般的な機能,つまり〈トータル情報システム〉としての機能であり,つぎに意思決定への支援機能,つまり〈意思決定支援システムdecision support system〉(略称DSS)の機能が求められる。さらに,経営の意思の組織行動への反映と適切な管理活動実現のための指令・調整などにも情報機能が使われるので,これらに関する機能上の配慮も必要である。経営情報システムの新型情報システムあるいはその代替的用語として,トータル情報システム,意思決定支援システムが使われるのは,このような事情に由来する。経営情報システムは,1980年を境として特徴的に二つの型に分かれる。すなわち1970年代までは,巨大なコンピューターをホスト・コンピューターとして,できる限り大きなコンピューター・ネットワークを構築するものであった。これに対し80年代からは,分散情報システムを併用することによる情報効率化のシステムへと移行している。後者はOA(オフィス・オートメーション)的MISと呼ばれる。
執筆者:涌田 宏昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報