出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…細紵(さいちよ),縑(けん),緜(めん)を出す〉とあって,3世紀後半には稲や麻の栽培がなされ,また蚕を飼って糸を紡ぎ,麻布や絹織物,真綿が生産されていたらしいことが知られる。畿内とその周辺の4世紀ころの古墳からは絹織物の断片がいくつか発見され,畿内では養蚕や絹織物の生産がなされていたと考えられるが,それらの中には平絹だけでなく縞織物や経錦も含まれていて,大陸や朝鮮半島との関連を考えざるをえない。《魏志倭人伝》には魏の景初2年(238),倭の女王卑弥呼が,男女生口(せいこう)10人と班布2匹2丈を持って魏へ朝貢し,魏王からは錦をはじめ多くの染織品や刀や鏡などが卑弥呼に贈られた旨が記されている。…
…また中国周辺にとどまらず,旧ソ連邦オグラクティ,キルギス共和国ダラス郡ドーロのケンコル,シリアのパルミュラなどから発見された漢代の絹織物は,東西交渉史のうえにも貴重な足跡を残している。出土遺品から当代の絹織物の種類をみると,粗密・厚薄のさまざまな平絹,後世の綾の祖型ともいうべき平織地に浮糸で文様を織り出した単色の紋織物である綺,複雑な綟り(もじり)組織の羅,経糸に多色の彩糸を用いて文様を織り出した経錦,輪奈(わな)織に似た起毛錦,鎖繡を主体とした刺繡,さらに彩絵(描絵)や印花(摺絵)などの加飾技法も行われている。文様は前代からあった祭服の十二章(日,月,星辰,山,竜,華虫,作会,宗彝,藻,火,粉米,黼黻)をはじめ,さまざまな動物文,植物文,幾何学文が用いられているが,いずれも象徴的に図様化され,特に錦文や繡文には霊気を感じさせるような力強さがある。…
…これは唐代に入り,従来の茜(あかね)染に対して,紅花の栽培が四川省一帯に広がったことに関係しているように思われる。 日本で〈蜀江錦〉の名で知られる錦には2種あり,一つは法隆寺伝来の古様な経錦(経糸で文様をあらわす)の織法による小文様のもので,鮮やかな赤地に格子連珠文様や,連珠に双鳳文を織り出した錦である。同種の赤地連珠文の経錦が新疆ウイグル自治区トゥルファンのアスターナ古墓から出土していることから,唐代に織製された蜀の錦が東西に輸出され,その一部が日本に伝存したものと考えられる。…
…この場合,織物組織の上では錦織に限らず,絣(かすり),綴織,縫取織などが包含されている。狭義には,〈錦〉としての特殊かつ複雑な組織によって織製された織物をさし,これは大きく〈経錦(たてにしき)〉と〈緯錦(ぬきにしき)〉とに分類される。 〈経錦〉は経糸によって地と文様が織りだされるもので,例えば3色の配色によるものであれば3色3本の糸を1単位として,これが互いに浮沈交替して地と文様があらわされる。…
※「経錦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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