線維性骨異形成(読み)せんいせいこついけいせい(英語表記)Fibrous dysplasia

六訂版 家庭医学大全科 「線維性骨異形成」の解説

線維性骨異形成
せんいせいこついけいせい
Fibrous dysplasia
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな病気か

 本来なら骨の内部は、海綿骨(かいめんこつ)と呼ばれる比較的軟らかい成熟した骨と、骨髄の脂肪組織からなるはずですが、この病気では名前が示すように、骨を作る過程異常が起こり、骨の内部が線維組織に置き換わり、そのなかに成熟していない骨が作られます。さらに、周囲の本来は厚い骨(皮質骨)が薄くなります。成長する時期に発見されたり、成人になってから見つかることがあります。

 1カ所にできる時(単発性)と、全身に多発する時(多発性)があります。多発性の時には体の片方にだけ現れることがあります。また多発性の時に、皮膚の色素沈着と性の早熟などのホルモン系の異常を伴うとオルブライト症候群と呼ばれます。骨形成を妨げる原因遺伝子が確認されていますが、家族内発生はみられません。

原因は何か

 体を構成する細胞は、細胞の外の環境から刺激を受けています。刺激の代表はホルモンで、その刺激を細胞のなかに伝える一連の蛋白質があります。そのひとつがG蛋白質と呼ばれており、それが異常になって骨の形成が障害されると考えられています。つまり、骨を作るべき細胞が、骨を作りなさいという指令を受け取ることができなくなるのです。

症状の現れ方

 骨の成長が障害され変形を引き起こすと、骨の出っ張り、あるいは腫脹(しゅちょう)として気がつきます。成長に伴って皮質骨が薄くなって、骨が弱くなると病的骨折を起こします。病変自体は痛みや強い変形を伴わないので、打撲外傷で撮影したX線写真で偶然発見されることもあります。

検査と診断

 X線写真で、骨のなかに比較的境界のはっきりした骨透明領域として確認されます。「すりガラス様」に見えることもあります。一部に嚢腫(のうしゅ)を形成しますが、嚢腫大部分を占める場合には、先に述べた骨嚢腫との区別が必要で、これにはMRI検査が有効です。

治療の方法

 もし、この病気が痛みの原因になっている場合には、周囲の骨組織を残して病巣掻爬(そうは)(かき取ること)を行います。骨の欠損部に対しては、放置するか骨移植を行います。変形が痛みの原因である場合には、骨を切って変形の矯正を行うこともあります。再発することもあるので、術後十分な経過観察を受ける必要があります。

病気に気づいたらどうする

 単発性なのか多発性なのかを明らかにするため、周囲の骨の異常をX線写真で調べたり、全身の骨を骨シンチグラフィーで調べたりします。骨折危険が生じないか、病巣の拡大や変形が進行していないか、X線で検査して経過をみていくことが必要です。病的骨折を起こしている場合は、骨折の治癒を優先させます。

岡田 恭司

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「線維性骨異形成」の解説

せんいせいこついけいせい【線維性骨異形成 Fibrous Dysplasia】

[どんな病気か]
 骨腫瘍類似疾患(こつしゅようるいじしっかん)(骨腫瘍(こつしゅよう)によく似た病気)の1つです。骨腫瘍類似疾患のなかでは、骨嚢腫(こつのうしゅ)(「骨嚢腫」)についで多くみられる病気です。
 骨の組織の一部に、線維組織と幼弱な骨組織ができます。
 1つの骨におこる単骨性線維性骨異形成(たんこつせいせんいせいこついけいせい)と、2つ以上の骨におこる多骨性線維性骨異形成(たこつせいせんいせいこついけいせい)とがあります。
 多骨性線維性骨異形成と、皮膚のミルクコーヒーのような色をした色素斑(しきそはん)(しみ)およびホルモンの異常をともなう場合は、オールブライト症候群(しょうこうぐん)といいます。
 線維性骨異形成自体は良性の病気で、生命の危険はありません。
 しかし、多骨性の場合には、きわめてまれではありますが、悪性に変化して、肉腫(にくしゅ)(がんとはの「悪性腫瘍のいろいろ」の肉腫)などになることがあります。
 また、多骨性の場合には、骨が変形してしまいます。
 単骨性の病変がおこりやすい部位は、大腿骨(だいたいこつ)(ももの太い骨)と、脛骨(けいこつ)(すねの太い骨)です。
 多骨性の場合は、すべての骨に発生する可能性があります。
 この病気がよくおこる年齢は、10歳代、10歳未満、20歳代となっています。
[治療]
 単骨性の場合、痛みがなく、病的骨折の危険性がなければ、治療の必要はありません。
 痛みがある場合や、骨皮質(こつひしつ)が薄くなって病的骨折をおこす危険がある場合に、変化をおこしている部分をかきとり(掻爬(そうは))、そのあとに骨移植を行ないます。
 肋骨(ろっこつ)や腓骨(ひこつ)(すねの細い骨)など、切除しても運動機能にほとんど障害がおこらない部位であれば、手術して切除することもあります。
 多骨性の場合は、痛みのある部位、変形のひどい部位が、手術の対象になります。しかし、手術後に再発することもあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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