骨腫瘍(読み)コツシュヨウ(英語表記)(Bone Tumors)

デジタル大辞泉 「骨腫瘍」の意味・読み・例文・類語

こつ‐しゅよう〔‐シユヤウ〕【骨腫瘍】

骨にできる腫瘍の総称。骨肉腫など。

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六訂版 家庭医学大全科 「骨腫瘍」の解説

骨腫瘍
こつしゅよう
Bone Tumor
(子どもの病気)

どんな病気か

 骨腫瘍とは骨に発生する腫瘍であり、良性悪性とに分けられます。非常に多くの種類がありますが、子どもに発生する代表的な骨腫瘍として、悪性では骨肉腫(こつにくしゅ)ユーイング肉腫があり、良性では単発性骨嚢腫(たんぱつせいこつのうしゅ)類骨骨腫(るいこつこつしゅ)があげられます(コラム)。ここでは骨肉腫について述べます。

症状の現れ方

 骨肉腫は悪性の骨腫瘍のなかで一番多く、10代にそのほとんどが発生します。発生する部位膝関節(しつかんせつ)の周囲と腕の付け根に多く、その部位に痛みとはれがみられるようになります。その痛みとはれは放っておいても良くならず、だんだんひどくなっていきます。痛む部位を手で触ると熱をもっていて、そこを押さえると痛がります。

検査と診断

 一刻も早く整形外科を受診する必要があります。抗がん薬による治療をなるべく早く始める必要があるからです。診断にはX線検査、CT検査、MRI検査血管造影、シンチグラフィなどを用いますが、病巣部の細胞を取って顕微鏡でその細胞の種類を見る生検検査が最も重要です。

治療の方法

 治療は通常、先ほど述べた抗がん薬による治療を行って骨肉腫を小さくしたあとに、手術によってそれを取り除き、術後にも抗がん薬を注射するという方法が用いられます。現在では脚や腕を切断することは少なくなりましたが、進行した例ではやむをえない場合もあります。

 手術のあとにも抗がん薬を注射する理由は、血管のなかに入り込んだ可能性のある骨肉腫の細胞を殺すためです。これらの細胞が残っていると肺などに転移を起こすことになります。抗がん薬は吐いたり毛が抜けるなどの副作用がありますが、医療の進歩によって60~70%は治る病気になってきました。いずれにしても整形外科腫瘍専門医による治療が必要な病気です。

湏藤 啓広

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家庭医学館 「骨腫瘍」の解説

こつしゅよう【骨腫瘍 (Bone Tumors)】

 骨の組織には、いろいろな腫瘍ができますが、大きく分けると3種類になります。
 第1は、原発性骨腫瘍(げんぱつせいこつしゅよう)です。これは初めから骨にできる腫瘍です。このなかには、発生した場所では大きくなりますが、ほかの臓器や組織には転移をしない良性骨腫瘍(骨の良性腫瘍)と、発生した場所で大きく発育するばかりでなく、ほかの臓器や組織に転移する可能性のある悪性骨腫瘍(いわゆる骨のがん)が含まれます。
 後でも述べますが、このような良性か悪性かという腫瘍の診断と、その診断に応じた治療が、もっともたいせつです。
 第2は、続発性骨腫瘍(ぞくはつせいこつしゅよう)です。肺がん、乳がん、前立腺(ぜんりつせん)がんなど、いろいろな臓器にできたがんが骨に転移した場合、および筋肉や皮下組織などに発生した肉腫(にくしゅ)が骨に転移した場合です。これは、ほんとうの意味での骨腫瘍ではありませんが、骨腫瘍の一分野として扱われています。
 第3は、骨腫瘍類似疾患(こつしゅようるいじしっかん)です。最初に骨にできますが、その性質がほんとうの腫瘍であるかどうか、はっきりしない病気です。腫瘍に類似した性格をもっているので、骨腫瘍に含めて扱われています。
 良性骨腫瘍と悪性骨腫瘍とでは、発生頻度は良性骨腫瘍が圧倒的に多く、悪性骨腫瘍の発生は少数です。また、ほかのがんと比べると、悪性骨腫瘍の発生は、非常に少ないといえます。
 しかし、診断が遅れると生命にかかわりますから、早期発見・早期治療がなによりもたいせつです。
 比較的発生数の多い悪性骨腫瘍としては、子どもに多くみられる骨肉腫(こつにくしゅ)(「骨肉腫」)やユーイング肉腫(「ユーイング肉腫」)、比較的高い年齢層にみられる軟骨肉腫(なんこつにくしゅ)(「軟骨肉腫」)、悪性線維性組織球腫(あくせいせんいせいそしききゅうしゅ)(「悪性線維性組織球腫」)などがあります。
 このほかにも、発生数は少ないのですが、いろいろな腫瘍があります(「骨軟骨腫」「内軟骨腫」「巨細胞腫」「非骨化性線維腫」「骨嚢腫」「線維性骨異形成」「好酸球性肉芽腫」)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「骨腫瘍」の意味・わかりやすい解説

骨腫瘍
こつしゅよう
bone tumor

骨を侵す腫瘍には、骨組織そのものから発生する原発性骨腫瘍と、他の臓器の悪性腫瘍の転移による転移性骨腫瘍とがある。原発性骨腫瘍には良性のものと悪性のものがある。原発性の良性骨腫瘍としては、軟骨性外骨腫(骨軟骨腫)や内軟骨腫などがある。悪性骨腫瘍としては、骨肉腫とよばれる骨原性肉腫、軟骨肉腫、ユーイングEwing肉腫などがあげられる。骨髄腫は多発性で、全身病である。また骨巨細胞腫には良性と悪性のものがある。転移性骨腫瘍の代表的なものは骨転移癌(がん)である。

[永井 隆]

症状

一般に長管状骨の骨腫瘍では、患部の腫脹(しゅちょう)を主訴として受診することが多い。悪性腫瘍では疼痛(とうつう)を伴う。また、病的骨折をおこして受診することもある。骨腫瘍による腫脹は炎症性の腫脹とは異なり、発赤や熱感はないか、あっても軽度であるのが普通であるが、骨肉腫では明らかなことがあり、動脈の拍動を伴うことがある。疼痛も炎症性のものに比べると一般に軽いが、腫瘍が神経を圧迫すると頑固な神経痛をおこす。良性骨腫瘍では全身状態は障害されないが、悪性骨腫瘍の場合は全身状態が侵されて末期には悪液質に陥る。

[永井 隆]

治療

良性骨腫瘍では、腫瘍が腱(けん)や筋の動きを妨げたり神経を圧迫している場合は腫瘍を切除する。原発性の悪性骨腫瘍は、早期に腫瘍を完全に切除するか四肢を切断して化学療法を行うことが望まれる。転移は肺に生ずることが多く、転移性骨腫瘍も含めて悪性骨腫瘍の治療成績はよくない。

[永井 隆]

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百科事典マイペディア 「骨腫瘍」の意味・わかりやすい解説

骨腫瘍【こつしゅよう】

骨及び軟骨の腫瘍の総称。大きく分けて原発性腫瘍,続発性腫瘍,腫瘍性類似疾患の三種類。原発性腫瘍は,良性のものと悪性のものに分けられ,前者には骨軟骨腫,良性軟骨芽細胞腫,内軟骨腫などがある。後者には軟骨肉腫,骨肉腫,骨繊維腫。ユーイング肉腫などがあり,いずれも化学療法,手術などの進歩によって,治療成績が向上してきている。続発性腫瘍は,他の部位に発生した癌や肉腫が骨組織に転移したもの。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「骨腫瘍」の意味・わかりやすい解説

骨腫瘍
こつしゅよう
bone tumor

他の部からの癌の転移もあるが,多くは骨をつくる細胞や組織の異常増殖によって起る骨組織の腫瘍。良性と悪性があり,良性骨腫瘍には外骨腫,内軟骨腫など,悪性には肉腫が多く,骨肉腫,軟骨肉腫,ユーイング肉腫,悪性巨細胞腫などがある。多くは他覚所見 (形態の異常) や疼痛,運動痛で発見され,X線像と試験穿刺などで診断される。良性のものは掻爬 (そうは) と骨移植で軽快するが,悪性の腫瘍は手術で摘除する。

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