美含郡(読み)みくみぐん

日本歴史地名大系 「美含郡」の解説

美含郡
みくみぐん

和名抄」にみえ、同書東急本に「美具美」の訓があり、郡内の美含郷は「三久美」と訓じる。「拾芥抄」の訓もミクミだが、近代以降はミグミと濁ってよぶ。但馬国の中央北端に位置し、東は城崎きのさき郡、南は気多けた郡・七美しつみ郡、西は二方ふたかた郡に接し、北は海(日本海)。東の郡境には矢次やつぎ(五六八メートル)、南の郡境には三川みかわ(八八七・八メートル)、西の郡境には久斗くと(六八〇メートル)が連なり合ってそびえ、郡域の九割近くが山地である。これらの山地の狭い谷間を縫って、東から竹野たけの川・佐津さづ川・矢田やだ川・長谷はせ川が北流し、それぞれの下流域に小平野を形成して日本海に注いでいる。郡内は竹野・佐津・矢田三河川流域と西端の長谷川流域の四地区に大別され、竹野川流域は現竹野町、他の三地区は現香住かすみ町に含まれる(久斗山地区のみ現浜坂町)

〔古代〕

郡名の初見は長屋王家木簡の「美含郡海藻贄四連」で、海岸線の長い当郡の特徴を表している。管郷は「和名抄」高山寺本では佐須さす竹野たかの香住・美含・長井ながいの五郷、東急本はこれに余戸あまりべ郷を加える。養老令の基準では下郡。このうち佐須は佐津川に、竹野・香住は現町名に、余戸は地名に遺称として残る。郡家は美含郷に所在した可能性が高いが、佐須郷・香住郷説もある。「延喜式」神名帳の美含郡には一二座が登録されているが、いずれも小社である。古代創建を伝える寺院に竹野町の蓮華寺、香住町の大乗だいじよう寺・帝釈たいしやく寺がある。

「三代実録」貞観一七年(八七五)一〇月八日条に「但馬国節婦美含郡人日置部小手子叙位二階」とある。小手子は権大領日下部良氏の妻で夫の死後貞節を守ったことにより褒賞されたのである。同書元慶二年(八七八)九月二二日条には「但馬国美含郡人従七位上若倭部氏世、貞氏、貞道等三人、賜姓楓朝臣」とあり、氏世らの父広永が賜姓したとき脱漏していたので追贈されている。また同書同四年六月一九日条によると、「長五丈余、広一丈六尺許」の一大船が美含郡の海上に浮び漂っているのを国府が注進しており、これは去る六月一七日に二方郡より注進した異国船三隻のうち一隻であろうとしている。「類聚符宣抄」によると、美含郡少領刑部福保は承平六年(九三六)に補任され給与を受けているが、その後に考帳が提出されていないので、天慶二年(九三九)五月二二日に譜代でない従八位下刑部宿禰福秀に交替されるように弁官より太政官に申請し、一二月二七日に中納言藤原師輔の宣により許可された。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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