737年(天平9)より1093年(寛治7)の間の太政官符,宣旨などの公的な文書700通余りを類別し,編集した法令集。《左丞抄》とも称する。11世紀末ないし12世紀初頭の編纂と推定され,元来は10巻より成るが,今は巻二,巻五を欠く。本書の編者は必ずしも明らかではないが,弁官局の上首である左大史の地位を代々占めた小槻氏(おづきうじ)の編纂とする説,日記《左経記》を記した左大弁源経頼の編とする説などがある。宮内庁書陵部壬生家旧蔵本中に1121-22年(保安2-3)書写の古写本8冊,およびこれを江戸時代初期に書写した新写本8冊が伝わる。本書は江戸時代まで壬生家の文庫に秘蔵されていたが,1820年(文政3)塙保己一がこれを出版し,広く流布するに至った。《新訂増補国史大系》所収。
執筆者:吉岡 真之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
平安時代後期に類別編纂(へんさん)された法令集。10巻。「左丞抄(さじょうしょう)」ともいう。平安初期より1093年(寛治7)までの太政官符(だいじょうかんぷ)、宣旨(せんじ)、官宣旨、解状(げじょう)など730通余を収載。737年(天平9)の官符、詔書各1通も含むが、全体の3分の2近くは宣旨で、『類聚三代格(さんだいきゃく)』未収文書や他書にみえない平安中期の文書を多数収めており、公家(くげ)制度研究の重要史料である。編者は左大弁(さだいべん)源経頼(つねより)とする説が有力であり、のち左大史(さだいし)を世襲した小槻(おつき)氏が太政官政務の参考書として転写したとみられ、1121~22年(保安2~3)の最古の写本が長く壬生官務家(みぶかんむけ)に秘蔵された(現、宮内庁書陵部蔵)。1691年(元禄4)ごろに壬生季連(すえつら)が書写してから数種の転写本が作成され、1820年(文政3)塙保己一(はなわほきいち)によって出版された。宮内省図書寮編本のほか、『新訂増補国史大系』に所収。
[弓野正武]
『清水潔著『類聚符宣抄の研究』(1982・図書刊行会)』
「左丞抄(さじょうしょう)」とも。壬生(みぶ)官務家(小槻(おづき)氏)が,737~1093年(天平9~寛治7)の宣旨・官宣旨・太政官符などを収集した書物。10巻。編者不詳。平安末期には成立。現存する8巻は,神事・災異・疾病・帝皇・后宮・皇親・外記雑事・弁官雑事・諸国雑事・諸道雑事・給上日事に分類されている。官符・宣旨を原形に近いかたちで引用し,その作成過程や事務処理の詳細を知ることができる。「国史大系」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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