耳を掩うて鐘を盗む(読み)みみをおおうてかねをぬすむ

精選版 日本国語大辞典 「耳を掩うて鐘を盗む」の意味・読み・例文・類語

みみ【耳】 を=掩(おお)うて[=塞(ふさ)ぎて]=鐘(かね)[=鈴(すず)]を盗(ぬす)

(「呂氏春秋‐不苟論・自知」の「范氏之亡也、百姓有鍾者、欲負而走、則鍾大不負、以椎毀之、鍾況然有音、恐人聞之而奪一レ己也、遽揜其耳」による) 良心に反する行為をしながら、しいてそのことを考えないように努めること。また、自分では悪事をうまく隠しおおせたと思っても、世間の人は皆知っていることのたとえ。
※開化問答(1874‐75)〈小川為治〉二「諺に耳(ミミ)を塞(フサ)ぎて鈴(スズ)を盗(ヌス)むといふ如く、悪人といふとも決してその行ひを以てよきものとは思はざれば」 〔朱憙‐答江徳功書〕

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故事成語を知る辞典 「耳を掩うて鐘を盗む」の解説

耳を掩うて鐘を盗む

うまく罪をかくしたつもりでも、すっかり知れ渡っていることのたとえ。また、やましいことをしながら、しいてそれを考えないように努めることのたとえ。

[使用例] ことわざに耳をふさぎて鈴を盗むという如く、悪人というとも決してその行いを以てよきものとは思わざれば[小川為治*開化問答|1874~75]

[由来] 「呂氏春秋こう論・自知」の一節から。昔、ある貴族の家が滅んだとき、その屋敷から鐘を盗もうとした人物がいました。しかし、大きすぎるので、割ろうとしてつちで鐘を打ったところ、大きな音が響き渡りました。すると、この盗人、誰かに音を聞きつけられるのではないかと心配になり、慌てて自分の耳をふさいだということです。

〔異形〕耳を塞いで鈴を盗む。

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ことわざを知る辞典 「耳を掩うて鐘を盗む」の解説

耳を掩うて鐘を盗む

良心に反することをしながら、しいてそれを考えないように努める。また、うまく罪をかくしたつもりでも、すっかり知れ渡っていること。

[解説] 鐘を盗もうとした男が、鐘が大きすぎるので、割って持ち去ろうと、つちで打つと大きな音がした。その男は、誰か他の者がその音を聞きつけて鐘をとりにくるのではないかと、急いで自分の耳を押さえて鐘の音が聞こえないようにしたという「呂氏春秋―不苟論・自知」にみえる故事によることば。

〔異形〕耳を掩うて鈴を盗む

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