日本大百科全書(ニッポニカ) 「肝内胆汁うっ滞」の意味・わかりやすい解説
肝内胆汁うっ滞
かんないたんじゅううったい
肝内外の主要胆管に狭窄(きょうさく)、閉塞(へいそく)を伴うことなく、胆汁中諸成分の血中増加と肝組織内停滞をきたす疾患をいう。臨床的にはしばしば皮膚瘙痒(そうよう)感を訴え、生化学的検査では血清ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、総コレステロールの上昇がある。障害の部位により肝内胆管の障害、毛細胆管壁の障害、肝細胞からの胆汁分泌の機能的障害に分けることができる。急性肝炎でも肝内胆汁うっ滞をおこす例がみられるが、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎やIgG4症による硬化性胆管炎のように慢性経過をとる肝内胆汁うっ滞も注目され、原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎のような慢性胆汁うっ滞症は厚生労働省の難病(特定疾患)にも指定されている。成因としては、薬物やウイルスのほか、妊娠時にみられるもの、反復性にくるもの、原因不明のものなどがある。ただし、重症感染症など他疾患に合併するものや手術後にみられるもの、あるいは体質性黄疸(おうだん)などは除外されている。
肝内胆汁うっ滞は急性、反復性、慢性、乳児期の4群に大別される。急性のものは自覚症状として瘙痒(かゆみ)が認められるが、確実な診断は組織学的所見による。副腎(ふくじん)皮質ステロイドが有効である。反復性のものは放置してもよいが、慢性および乳児期のものは対症療法および外科的療法も行われるが、一般に予後は不良である。
[太田康幸・恩地森一]