内科学 第10版 の解説
肝・胆道疾患における新しい展開
肝画像診断における進歩としてはソナゾイド造影超音波とEOB-MRIがあげられる.ソナゾイド造影超音波はソナゾイドを静注投与することにより肝腫瘍の鑑別診断,治療支援,あるいはdefect reperfusion imageを用いることによりBモードでは検出できないような結節も検出できるなどきわめて肝腫瘍の診断と治療に貢献する.EOB-MRIは血流動態を見るダイナミックスタディとともに肝細胞相を有しているのが特徴である.肝細胞相では多血性肝細胞癌の診断能が向上するだけにとどまらず,乏血性の早期肝細胞癌の診断能も向上する.
多発性肝囊胞の治療においても,肝移植や肝切除に加えて動脈塞栓療法やオレイン酸エタノールアミン(EO)を用いる硬化療法が開発され,従来の治療法に比して治療効果がきわめてよいことも知られてきた. 胆道系では,IgG4関連の胆管炎が知られるようになってきた.IgG4関連の胆管炎は後天性の良性の胆道狭窄・閉塞の原因である.狭窄・閉塞の原因は,病変局所の線維化とIgG4陽性形質細胞の浸潤などを特徴とする硬化性胆管炎である.このような症例に対してはステロイド治療が奏効する. 肝細胞癌の治療においても最近の進歩として分子標的薬ソラフェニブの登場があげられる.ソラフェニブはChild-Pugh分類Aの肝硬変症を背景にもつ進行肝癌(門脈管浸潤や遠隔転移を伴う切除不能肝細胞癌)に対して適応がある唯一の抗癌薬である.従来,肝細胞癌に対する薬物療法は存在しなかったが,ソラフェニブが予後を延長することが証明され標準的治療となった.[工藤正俊]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報