肝臓の血液循環とうっ血肝

六訂版 家庭医学大全科 の解説

肝臓の血液循環とうっ血肝
(肝臓・胆嚢・膵臓の病気)

 全身の血管系(体循環)は、心臓から送り出される血液が流れる動脈と、心臓にもどる血液が流れる静脈からなりますが、肝臓は動脈・静脈に加え、門脈(もんみゃく)という特有の血管系をもっています。

 心臓から送り出された血液は、大動脈、腹腔(ふくくう)動脈を経由して肝動脈として肝臓に入り、左右の肝動脈に分かれて肝臓全体に分布し、酸素を供給しています。一方、門脈は、胃、小腸大腸などの消化管膵臓(すいぞう)脾臓(ひぞう)胆嚢(たんのう)などの内臓から血液を受け、上腸間膜(じょうちょうかんまく)静脈および脾静脈に合流し、さらに門脈本幹として肝内に入ります。

 肝臓は肝動脈と門脈の両者から血液の流入を受けています。門脈血には、消化管から吸収された栄養素がたくさん含まれています。肝臓に流入する血液量の70%は門脈に、30%は肝動脈に由来します。

 これらの流入血液は、正常な肝臓ではすべて、肝細胞の集合体である肝小葉(かんしょうよう)内に放射線状に走っている類洞(るいどう)と呼ばれる毛細血管のような通路に合流し、合流した血液は肝小葉の中心にある中心静脈に集まったあと、次第に右、中、左肝静脈の3本の肝静脈に合流後、下大静脈へ流入して、心臓へもどっていきます(図16)。

 動脈血で運ばれてきた酸素と消化管で吸収され門脈血で運ばれてきた栄養物は、類洞を通る間に肝細胞に取り込まれ、肝細胞で代謝された物質は逆に類洞に排泄されて心臓を介して全身に運ばれます。

 肝臓は血管が非常に豊富で、心臓から送り出される血液量の約4分の1を受けており、循環血液量を調節するうえで重要な役割を担っています。すなわち、循環血液量が増加した場合は肝臓も腫大して肝内に血液を保持し、心臓の負担を軽減します。心臓のポンプ作用が低下した心不全では、血管内の血液量が増加します。軽度の時は、肝臓が腫大することで循環血液量を軽減しますが、高度になってくると代償できなくなり(うっ血肝となる)、心不全症状や肝機能障害が表面に出てきます。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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