六訂版 家庭医学大全科 「肝臓損傷」の解説
肝臓損傷
かんぞうそんしょう
Hepatic injury
(外傷)
どんな外傷か
肝臓は容積が大きいことと実質に対して被膜の比率が小さいために損傷を受けやすく、腹腔内臓器のなかでは最も損傷の発生頻度が高い臓器です。肝臓には肝臓動脈と門脈の2つの大きな血管を介して血液が流入し、静脈血は2本の肝臓静脈を介して下大静脈に流出しています。
このように、肝臓は血流に富んでおり、また太い血管と接しているため、損傷の程度によっては容易に出血性ショックを生じます。
原因は何か
ハンドルや右下部肋骨骨折などによる
症状の現れ方
肝臓損傷に特異的な症状はないため、
検査と診断
前記の症状・所見に加えて、血液検査で
治療の方法
輸液の投与により血圧が安定すれば保存的治療を選択します。造影CTにより造影剤の漏れがみられる時には、患者さんを血管撮影室に移して、出血の原因になっている肝臓動脈の塞栓術(コイルなどを用いて出血している動脈を詰めて止血する方法)を行います。大量の輸液投与によっても血圧が不安定な時には手術を選択することになります。
患者の状態が不安定な時(低体温、凝固異常、代謝性アシドーシス)には、最も簡単な術式(ダメージコントロール)を選択し、状態が改善してから根本的治療を行わなければなりません。
葛西 猛
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報