トランスアミナーゼ(読み)とらんすあみなーぜ(英語表記)transaminase

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トランスアミナーゼ」の意味・わかりやすい解説

トランスアミナーゼ
とらんすあみなーぜ
transaminase

正式にはアミノトランスフェラーゼaminotransferase(アミノ基転移酵素)という。アミノ酸を脱アミノ反応により2-オキソ酸ケト酸ケトン酸ともいう)R-CO-COOHにし、とれたアミノ基を別のケト酸に転移してアミノ酸にする反応を進める酵素総称である。動物、植物、微生物に広く分布し、アミノ酸代謝に重要な役割を果たしている。哺乳(ほにゅう)類やニワトリでは、ミトコンドリアにあるものと細胞質にあるものの2種があり、どちらも分子量約9万7000で、二つのサブユニットからなる。補酵素としてピリドキサールリン酸を2個もち、反応の過程でアミノ基は補酵素に結合してピリドキサミンリン酸になる。個々のアミノ酸あるいは一群のアミノ酸に対して特定の酵素があり、1992年の段階で75以上の酵素が登録されている(国際生化学連合=IUBMB発行の『酵素命名法』Enzyme Nomenclatureによる)。反応の平衡定数が1に近く、ほとんどの反応が可逆であるため、アミノ酸代謝に多面的な働きをする。

 GOTグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やGPTグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、またはアラニンアミノトランスフェラーゼ)は肝機能指標とされ、肝炎心筋梗塞(こうそく)の診断に使われている。GOTのアミノ酸配列は1973年に決定された。アミノ酸412個からなり、補酵素は258番目のリジンとシッフ塩基をつくって結合している。反応の平衡定数が1に近いので、反応はほとんど可逆である。大腸菌のグルタミン酸アミノトランスフェラーゼは、2003年1.82オングストローム(Å)解像度で6量体の結晶構造が決定された。

[野村晃司]

『三浦謹一郎編『プロテインエンジニアリング』(1990・東京化学同人)』『三浦謹一郎編『シリーズ分子生物学6 構造生物学』(1998・朝倉書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トランスアミナーゼ」の意味・わかりやすい解説

トランスアミナーゼ
transaminase

アミノ基転移酵素。アミノ酸のα-アミノ基をα-ケト酸のα-炭素原子に転移させて,それに対応するアミノ酸を生成する一群の酵素をいう。アスパラギン酸トランスアミナーゼ (GOT) およびアラニントランスアミナーゼ (GPT) などが最もよく知られている。 GOTや GPTは動植物界,微生物界に広くみられ,人体では肝臓,腎臓,心筋,骨格筋などに多く存在している。血清中の GOTや GPTの活性は種々の疾患で高まるので,臨床検査でよく測定される。たとえば,肝炎の際には血清 GPTの活性が,心筋梗塞の際には血清 GOTの活性が,著しく上昇する。

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