灯火として焚(た)いたマツの割り木。枯れマツの樹脂の多い部分を細かく割って燃やして灯火としたのは古い。その歴史は長く、昭和になっても行っている所があった。またマツの大木の古い切り株で、樹脂だけが残ったものを掘り出して小さく割り、松取り箱に入れておいて用いた所もあった。いろりの火の届かない土間などで夜なべ(夜業)をするときは、子供が火の番をしてマツを補充した。この火は屋外の灯火としても用いられ、屋内の照明として用いられなくなったあとも、夜釣りのときに用いたり、盆の精霊迎えに迎え火として焚いたりする所もあった。コエマツとよぶのは関西に多く、東北ではアブラマツ、関東ではヒデマツとよぶ所が多い。そのほかカンマツ、ワリマツ、ネマツなどその呼称は多い。樹脂の多いヒノキの根などを用いた所もある。これらを専用の台の上で焚いた。いろりの隅に枝の四方に出た木を立てて、その枝の間に平たい石をのせた松灯蓋(まつとうがい)の上で焚いたり、石屋のつくったヒデバチという石の鉢や、古鍋(ふるなべ)あるいは割れた陶器などを台にして焚いた。こうした灯台はマツダイ、カンタロ、トウゲなどともよばれ、その呼称も多い。
[倉石忠彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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