改訂新版 世界大百科事典 「夜なべ」の意味・わかりやすい解説
夜なべ (よなべ)
夜間に家事を行うこと。ナベとは,夜食用の鍋にちなむといわれる。オナベ,ユウナベなどともいうが,夜分の仕事という意味で夜割(よわり)と呼ぶ地方もある。江戸時代初期の慶安御触書に〈男は作をかせぎ,女房はおはたをかせぎ,夕なべを仕〉とあるように,農民の夜なべは古くからあったとみられる。農村の夜なべ仕事としては,もみすり,稲こき,わら仕事,糸繰り,苧績(おうみ)などが主で,電灯が普及する以前には,照明具として松脂(まつやに)の〈ひで〉や囲炉裏の火,あるいはランプが用いられた。まれには,月明りの下で農作業も行われた。家族内での私財に当たる,いわゆる〈ほまち田〉の耕作とか開墾を,夜なべですることもあった。また,宵に娘宿へ集まる娘たちが手仕事を行うことが多かったところから,娘宿のことを,とくに〈夜なべ宿〉と呼んだ地方もある。
執筆者:平山 和彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報