家庭医学館 「肺真菌症の病変」の解説
はいしんきんしょうのびょうへん【肺真菌症の病変】
胸部X線写真を撮ると、肺炎だけでなく、結節(けっせつ)、空洞(くうどう)、膿胸(のうきょう)などと同じような変化が写ることがありますし、真菌球と呼ばれる特殊な陰を呈することもあります。どのような形で発病するかは、真菌の種類や患者さんの状態によって異なります。
たとえばアスペルギルスの場合、急性骨髄性白血病(こつずいせいはっけつびょう)など極端に白血球の数が少なくなったり、はたらきが悪くなる血液の悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の患者さんに感染すると、多発する肺炎や結節のかたちで現われますし、経過中に肺の中に穴が開いて空洞をつくったりします。
もともと慢性的な肺の病気をもつ人では病態は異なります。すなわち、結核にかかった後、残った空洞や拡張した気管支に、アスペルギルスの菌糸、反応して出てきた細胞、滲出物(しんしゅつぶつ)からなるやわらかいボール状のものが形成されることがあり、これを真菌球(しんきんきゅう)(アスペルギルス腫(しゅ))といいます。
また、肺内に感染したアスペルギルスが、肺をおおっている胸膜(きょうまく)にまで影響をおよぼすと、膿胸(のうきょう)をおこすことがあって、治療が困難な場合もあります。
クリプトコッカスは、他の真菌に比べてやや病原性が強く、健康な人にも感染します。その場合、胸膜に近いところに結節を形成し、結核にまちがわれたり、肺がんにまちがわれて手術されることもあります。
なお、クリプトコッカスは中枢神経(ちゅうすうしんけい)に移行しやすいため、髄膜炎(ずいまくえん)をおこしやすく、病型としてはむしろ髄膜炎のほうが多いようです。