膿胸とは、
期間によって急性膿胸(3カ月未満)、慢性膿胸(3カ月以上)に分けられます。また、菌の種類によって
急性では
診断は胸部X線検査で胸水がたまっている像がみられ、
胸水は必ず細菌検査をし、結核菌も培養して調べます。細菌性膿胸でも菌を検出できない場合もあります。また、胸部CT検査は膿状の液体がどのくらい、どこにたまっているのか判断するのにとても有用です。
結核性膿胸の場合は慢性の経過をとり、多くは結核性胸膜炎の既往があって、胸水も膿性でなく褐色を示すことがあります。また、結核菌を証明できないことも多くあります。
膿胸症例の44%で糖尿病、肝疾患、うっ血性心不全、閉塞性肺疾患などの基礎疾患を伴うことや、アルコール依存・喫煙との関係がいわれています。
原因となる細菌に感受性のある抗生物質の全身投与と胸腔ドレナージ(チューブによる排液)の両方が必要です。抗生物質は、広域ペニシリンや第2世代セフェム系の薬物が点滴で投与されます。しばしばアミノグリコシド系薬剤も併用します。
胸腔ドレナージに使うチューブは膿状の胸水の詰まりをなくすため、できるだけ太いものを使います。チューブから直接抗生物質を注入したり、生理食塩水で胸腔内を洗浄します。
慢性膿胸は難治性なので、胸膜肺切除などで肺の
結核専門医、呼吸器疾患専門医のいる病院(とくに国立病院機構の呼吸器専門病院など)を受診し、相談する必要があります。
岡田 全司
肺炎や
高齢で寝たきりの人に発症しやすく、口腔内の細菌が肺内に流れ込みやすいのがその理由です。
原因が
発熱、胸痛(深呼吸や咳で増悪するのが特徴)、
慢性膿胸では、年余にわたって無症状のこともあります。
胸部X線検査で胸水がたまった像を認め、
採取された胸水の培養により、起炎菌が決定されます。
血液検査では、白血球増加、CRP高値、赤沈促進などの炎症所見の亢進が認められます。
カルバペネムという強力な抗菌薬が投与されます。また、クリンダマイシンという嫌気性菌に優れた抗菌力をもつ抗菌薬が併用されることもあります。
膿胸の治療では、全身的な抗菌薬の投与と同時に、胸腔内の膿性胸水を排除することが重要です。胸腔内にチューブを留置し、持続的に排液します。胸腔内を生理食塩水で洗浄したり、アミノグリコシドなどの抗菌薬を注入することもあります。
これらの治療により、多くは2~3週間で治癒します。
慢性膿胸では、内科的治療のみでは治癒させることが困難であり、多くの患者さんでは外科的治療が必要になります。基質化して厚くなった胸膜の
深呼吸や咳で増悪する胸痛を自覚し、発熱もあれば、早めに内科を受診します。高齢で寝たきりの人が発熱や胸痛を訴えた場合は、家族の方は患者さんを病院に連れていったほうがよいでしょう。
沖本 二郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
胸膜腔(きょうまくくう)内に化膿(かのう)性の滲出(しんしゅつ)液が存在する状態をいう。臨床上、急性膿胸と慢性膿胸に分ける。肺炎、肺化膿症、気管支拡張症、肺結核などの病巣から波及することが多いが、心膜炎、縦隔炎、横隔膜下膿瘍(のうよう)、肝膿瘍、敗血症、胸部の穿通(せんつう)性外傷、胸部外科手術などに随伴しておこることもある。起炎菌としては肺炎球菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、2~3種の真菌類があげられる。慢性膿胸はほとんどが結核性膿胸である。急性膿胸では高熱を発し、胸痛、呼吸困難、咳(せき)がおこる。治療はまず抗生物質を投与し、胸腔内に肺膿管を挿入し、水封式胸腔ドレナージ(回路を水封し胸腔内を陰圧にして排液する方法)を行う。慢性膿胸では外科的手術が必要となることが多い。自然治癒はまれで、放置すると肺や胸壁が破れ、治療がむずかしくなる。老人や小児では予後はかならずしもよくない。
[石原恒夫]
胸膜の感染症で,胸腔の中に膿性の滲出液が貯留した状態をいう。肺炎や肺化膿症,肺結核,手術後感染にひきつづいて起こることが多い。通常,高熱を発し,白血球数が増加する。まず急性膿胸で始まり,放置したり,処置が不適切だと慢性膿胸に移行する。慢性膿胸のなかでは,結核性膿胸tuberculous pyothoraxがその大部分を占める。慢性膿胸では胸膜の炎症のほか,繊維素の沈着,胸膜の肥厚,石灰の沈着を起こし,呼吸機能を著しく障害する。治療は,適正な抗生物質の使用とともに,急性期には,膿性の滲出液を誘導し吸引して排除する。慢性期では,外科的に肺剝皮術を行うことが多い。
執筆者:吉竹 毅
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,卵巣繊維腫などの骨盤内腫瘍で漏出性胸水を伴うことがあり,メイグス症候群Meigs syndromeとよばれる。滲出液は種々の胸膜炎や膿胸においてみられる胸水で,その原因によって外観は黄色透明~混濁,膿性,血性などさまざまであるが,一般に比重は1.018以上,タンパク質含有量3.0g/dl以上と,漏出液に比べ,高比重,高タンパク質であり,細胞成分も多い。その他,胸水にリンパ液が混じり,脂肪分の多い特有のミルク色を呈することがあり,乳糜(にゆうび)胸水とよばれる。…
…胸膜に起こる炎症で,肋膜炎ともよばれ,胸膜腔内に滲出液(胸水)が貯留する。滲出液が膿性の場合には膿胸(または化膿性胸膜炎),血性の場合には血性胸膜炎とよばれる。なお,外傷や大動脈瘤破裂などにより胸膜腔内に血液が貯留するものは,とくに血胸とよばれる。…
※「膿胸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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