腎腫瘍(読み)じんしゅよう(英語表記)tumors of the kidney

  • 腎腫瘍(腎・尿路腫瘍)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

腎臓に発生する腫瘍総称で,ウィルムス腫瘍,腎腺,腎盂癌の3つが代表的なもの。ウィルムス腫瘍は小児に好発する腎実質悪性腫瘍で,腎腺癌は腎細胞癌,グラビッツ腫瘍ともいい,腎実質に発生し,早期に血行転移しやすいため,かなり悪性である。初期の症状は血尿が最も多いが,倦怠感発熱などの不定の症状のことも多く,発見が遅れる。放射線療法も化学療法もあまり効果がない。腎盂癌はほとんどが血尿で発見される。尿管膀胱にも同種の癌が生じることが多い。手術を中心として,放射線療法と化学療法を併用する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

腎臓の実質細胞から発生する腎細胞癌(がん)で、90%が悪性である。副腎腫、腎癌、腎腺(じんせん)癌、グラビッツ腫瘍などは、いずれも腎細胞癌の同義語である。ほかに、きわめて悪性度の強いウィルムス腫瘍があり、これにも腎芽細胞腫、胎生腫などの同義語がある。ウィルムス腫瘍の95%は小児に発生するが、まれに成人にも発生する。そのほか悪性腎腫瘍として扱われるものに腎盂(じんう)癌がある。これは腎盂の移行上皮から発生するもので、尿管や膀胱(ぼうこう)へ管内性に進展しやすい。
 良性腫瘍には、腺腫、線維腫、血管腫と、大きくなるタイプの血管筋脂肪腫さらにオンコサイトーマoncocytoma(膨大細胞腫)がある。これらは組織像は良性であるが、血管筋脂肪腫では血管腫の部分が破裂して大出血することがある。
 もっとも発生頻度の高い腎細胞癌についてみると、50歳以後に多く発生し、男性は女性より2倍も多い。腫瘍は一般に被膜に囲まれた黄色くて硬い均一なもので、ときに出血や壊死(えし)を伴う。病理組織学的には顆粒(かりゅう)細胞型、透明細胞型、混合型があり、多くは細胞質の明るい核の異型性の少ない透明型である。臨床症状の三大徴候は、血尿、側腹部の腫瘤(しゅりゅう)、側腹部の疼痛(とうつう)とされるが、実際には典型的に示す例は少なく、骨や肺に転移したための症状で発見される。ときに発熱や血清カルシウムの増加、また4%に赤血球増多症がみられる。1990年ころからは定期的健康診断の際に、腹部の超音波検査で偶然に発見される症例が増えている。このような症例は偶発癌とよばれ、一般に直径4センチメートル以下の小さな癌である。診断には、超音波エコーのほか排泄(はいせつ)性尿路撮影で腎臓に腫瘤が疑われること、CTスキャン、MRI(核磁気共鳴診断法)が行われる。大きな腫瘍では腎臓の静脈内に向かって癌が発育進行し、下大静脈内にも入りこんで腫瘍血栓をつくることがある。普通、初期の腫瘍でも手術で周囲の脂肪も含めて取り出す根治的腎摘出術が行われる。1キログラムほどの巨大な癌でも腎内にとどまっているものであれば、動脈塞栓(そくせん)併用の手術療法で完全な治療が期待できる。また、すでに肺などに転移していても、腎臓にある原発の癌を摘出した後、インターフェロン(ウイルス抑制因子)やインターロイキン2(癌細胞を殺したり免疫力を高めるT細胞を増殖させる因子)の免疫治療を行うと、転移巣が縮小・消失することがある。なお、小児のウィルムス腫瘍は放射線に感受性を有し、しかも各種の抗癌化学療法剤、とくにアクチノマイシンD、ビンクリスチンが有効である。[田崎 寛]

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内科学 第10版の解説

(1)腎腫瘍(renal tumor)
 腎腫瘍の80%以上は近位尿細管由来の腎細胞癌である.良性のオンコサイトーマや過誤腫である腎血管筋脂肪腫との鑑別が必要である.
腎細胞癌(renal cell carcinoma)
分類・病因
 近年,第3染色体上に存在するVHL(von Hippel-Lindau)遺伝子との関連が注目される淡明細胞癌と第7染色体上のc-met遺伝子との関連の深い乳頭状癌のように,遺伝子レベルの分類が注目されている.また慢性透析患者にみられる後天性腎囊胞性疾患(acquired cystic disease of the kidney:ACDK)に合併する腎細胞癌もある.
頻度
 50歳から60歳代に多く,性別では男に多い(約3:1).
臨床症状
 3主徴は血尿,疼痛,腫瘤であるが,最近では,自覚症状がまったくなく健診などで偶然発見される偶発癌が多くなっている.発熱,体重減少,全身倦怠感など尿路外症状で発見されることもあり,このような場合は予後不良なことが多い.
検査成績・診断
 腹部超音波検査,CT,MRI検査で充実性,もしくはときに囊胞性の内部不均一な腫瘍像を呈する.ダイナミックCT,MRIの造影パターンで,ある程度組織型の鑑別が可能である.特異的な検査値異常はないが,貧血,CRP,赤沈,α2グロブリン上昇,肝機能障害などがみられることがある.
治療
 転移を認めない場合は手術による摘出が唯一の根治的な治療法である.副腎,周囲脂肪組織を含めた根治的腎摘除が行われてきたが,最近では将来的な腎機能温存を企図して,腎部分摘除あるいは腫瘍核出術が行われることも多い.転移をきたした場合でも,可能なら原発巣を摘除し,分子標的薬による治療が行われることが多い.分子標的薬は,VEGFR阻害薬とm-TOR阻害薬が使用されている.インターフェロン-α,γ,IL-2などの免疫療法も有効なことがある.抗癌薬で有効なものはない.放射線感受性は低い.予後予測因子による治療法選択が推奨されている.
予後
 ステージT2までで転移がなければ,おおむね80%以上の5年生存率が期待できるが,初診時に転移が存在すると20%以下である.[山口雷藏・堀江重郎]

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