改訂新版 世界大百科事典 「腎盂尿管腫瘍」の意味・わかりやすい解説
腎盂・尿管腫瘍 (じんうにょうかんしゅよう)
tumor of renal pelvis and ureter
腎盂は広義には腎臓の一部であるが,発生学的には腎臓の実質とは異なり尿管と同一の由来である。したがって,ここに発生する腫瘍も腎癌など腎実質の腫瘍とは性質を異にするため,腎盂・尿管腫瘍として別にとりあつかうのが普通である。腎盂と尿管は膀胱と同じく,移行上皮と呼ばれる尿路系に特有な上皮細胞で覆われている。主としてこの上皮細胞から発生する腫瘍が腎盂・尿管腫瘍で,良性の乳頭腫と悪性の癌がその大部分を占めている。症状は血尿,側腹部痛などである。血尿は腫瘍からの出血によって起こり,側腹部痛は腫瘍による周囲臓器の圧迫のほかに,腫瘍による尿の流れの停滞と,これによる腎盂内圧の上昇が関与している。治療は,腎臓と尿管を一塊として摘出する手術(腎尿管全摘出術)が行われる。本腫瘍では良性と考えられる乳頭腫でも再発をくり返すことが多いので,発見ししだい根治的に全摘出術するのが普通である。手術療法以外に放射線療法や抗癌剤の投与を併用することが多いが,完全治癒率は約50%である。
執筆者:上野 精
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報