腫瘍内科医(読み)しゅようないかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「腫瘍内科医」の意味・わかりやすい解説

腫瘍内科医
しゅようないかい

呼吸器科や消化器科などとならぶ一般内科の一専門領域である腫瘍内科の専門医師。抗癌(がん)薬治療をはじめとして、すべての領域の悪性腫瘍患者、もしくはそのリスクをもつ者を診療する。腫瘍内科は、悪性腫瘍の予防から(早期)診断、治療ならびに精神的ケア、さらにはターミナル・ケアにいたるまでの、悪性腫瘍にかかわるすべての包括的医療を担い、大規模病院に設置されることも多くなっている。

 腫瘍内科医には、専門医療に携わる者としての認定医制度があり、日本の専門医資格としては、癌薬物療法専門医がこれにあたる。この資格を得るには、日本臨床腫瘍学会の認定施設において癌薬物療法の症例実績報告書を複数提出して面接を受け、悪性腫瘍に関する筆記試験に合格しなくてはならない。

 癌治療には、さまざまな治療手段を試みる集学的治療が要求される。このため、腫瘍内科医は癌患者の主治医として、十分な知識に根ざした抗癌薬治療をはじめ、最新の標準治療を実践するために、腫瘍外科医や放射線腫瘍医などのほかの専門医と連携して診療にあたる。また、苦痛を伴う患者の闘病生活に寄り添い、合併症も含めた治療だけではなく、心のケアおよびターミナル・ケアにかかわるために必要な資質も求められる。さらには、新たな治療を確立するために患者の同意参加を得て臨床試験を行うなど、癌治療の進歩に貢献する責務も負っている。2015年(平成27)時点で、日本の癌薬物療法専門医はおよそ1000人ほどで、その数は十分とはいえない。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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