日本大百科全書(ニッポニカ) 「臍感染」の意味・わかりやすい解説
臍感染
さいかんせん
umbilical infection
新生児期にみられる臍部(へそ)の細菌感染をいい、臍炎はそれによる代表的な疾患である。
臍帯(へその緒)は胎盤と新生児を結び付け、臍帯動脈2本と臍帯静脈1本を含むウォルトン膠質(こうしつ)Wharton's jellyとよばれる軟らかい物質でできており、母体からの栄養や酸素を胎児に送る役目をしている。出生と同時に人為的に切断されるが、その断端は通常、出生後1週間前後でミイラ化して新生児の体表から脱落する。脱落部が完全に乾燥し、上皮で覆われて正常な臍部が形成されるまでの間、湿潤で細菌が繁殖しやすい状態になっており、臍炎をおこしやすい。原因菌はブドウ球菌、大腸菌が多く、症状は、臍部よりの膿(のう)状分泌物および臍周囲皮膚の発赤がみられる。多くはアルコール消毒後、抗生物質を含む軟膏(なんこう)の外用で治癒するが、臍帯静脈は肝臓につながっており、新生児敗血症などの重篤な感染症の原因となることもある。慢性的に弱い感染が続くと肉芽組織の増殖がおこり、臍部からの分泌物が続く臍肉芽腫(さいにくがしゅ)となる。この場合は、肉芽組織を硝酸銀で焼却する。
臍感染の予防のためには、出生時より毎日臍部をアルコールによって消毒し、ガーゼなどで覆うことなく乾燥に努める。
[仁志田博司]