臨時資金調整法(読み)りんじしきんちょうせいほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨時資金調整法」の意味・わかりやすい解説

臨時資金調整法
りんじしきんちょうせいほう

日中戦争開始直後の1937年(昭和12)9月に制定され、資金面に関する初期の戦時経済運営の主要な法的枠組みとなった。設備資金の貸付と有価証券応募・引受・募集、会社の設立増資合併等を全面的に政府の許可制の下に置いた。実際の運用にあたっては、大蔵省商工省農林省日本銀行の委員が構成する臨時資金調整委員会が各産業を重要度に応じて甲ないし丙に格付けした事業資金調整標準を決定したうえで、一定金額以下の案件についてはこれに基づいて業態別に組織された金融機関・証券会社の団体が個々融資・応募等の案件を「自治的」に審査・調整し、とくに金額が大きいものについてのみ日本銀行と協議するという方法が採られた。日銀はそのなかでもとくに重要な案件のみを臨時資金審査委員会に付議した。同法は「不要不急」産業の投資抑制には大きな役割を果たしたが、運転資金は対象外とされ、この点は1940年10月に制定された国家総動員法に基づく銀行等資金運用令によって補完された。臨時資金調整法は1948年4月に廃止されるまで戦後も設備資金統制の法的枠組みとして機能し続けた。

[岡崎哲二]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「臨時資金調整法」の解説

臨時資金調整法
りんじしきんちょうせいほう

戦時金融統制の根拠法令。1937年(昭和12)9月,軍需産業・生産力拡充産業へ資金を重点的に配分するために制定された。輸出入品等臨時措置法とともに戦時統制の中心に位置した。長期資金を対象とする本法により,10万円以上の貸付・証券引受,資本金50万円以上の企業の設立,増資・合併は許可制となった。また産業を軍需産業の甲,紡績など非軍需産業の丙,中間の乙の3種に区分し,甲は原則許可,丙は原則不許可,乙は場合によるという許可方針(調整標準)が設定された。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の臨時資金調整法の言及

【銀行】より


[銀行の戦時統制]
 日中戦争の勃発にともない銀行等金融諸機関に対する戦時統制が実施された。1937年9月公布の臨時資金調整法により銀行は時局緊急産業への重点的融資にあたった。ついで40年10月公布の銀行等資金運用令に基づき,政府は銀行に対し強制融資制度を実施し,命令融資の範囲を拡張した。…

【宝くじ(宝籤)】より

…復活したのは1945年7月の勝札(かちふだ)である。これは,政府が軍事費調達のため臨時資金調整法(1937公布)に基づき発行したものであるが,抽選をまたずに敗戦となった。同年10月に宝くじの名称で〈政府第1回宝籤〉が発行された。…

※「臨時資金調整法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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