自動車登録(読み)じどうしゃとうろく

改訂新版 世界大百科事典 「自動車登録」の意味・わかりやすい解説

自動車登録 (じどうしゃとうろく)

自動車の所有者が公道上で自動車を使用するために,まず第一に必要な法的手続で,道路運送車両法に基づく。この制度は,行政登録の性格と民事登録の性格とをもつ。行政登録としては,陸上交通の基礎となる自動車使用の実態の把握,交通事故,自動車の盗難,その他自動車による犯罪の防止と捜査,自動車税等各種税金の課税対象の把握,自動車事故被害者救済のための強制保険加入の確保,などを目的とする。民事登録としては,自動車の所有権を公証し,自動車の得喪(とくそう)について正当な所有者の権利の保護,および不動産に準じた取扱いによる自動車への抵当権の設定を可能にするとともに,自動車の販売などの取引の安全確保を目的とする。

 登録はその自動車の使用の本拠を管轄する陸運事務所で受け付けられ,申請には車名・型式,車台番号,原動機の型式など自動車を特定する事項,購入・譲受けなど登録の原因および所有権を証する書面印鑑証明住民票など所有者および使用者に関する書面,ならびにその自動車が自動車の安全確保および公害防止に関する保安基準に適合していることを証する自動車検査証が必要である。登録申請が受理されると,自動車登録番号(自動車ナンバー)が指定され,全国の陸運事務所とデータ伝送回線で結ばれている登録センターの登録ファイルに入力・登録され,一元的に管理される。このシステムは1970年に運輸省電電公社の協力を得て6年をかけ,世界で初めて完成した。このファイルには登録番号,所有者の住所氏名,自動車の主要諸元,車台番号,塗色など自動車を特定する入力がなされ,登録番号の一部からでも該当する自動車(複数)の出力ができる。登録番号は,管轄陸運事務所名を表示する漢字,自動車の種別を表示する2桁の数字,整理用のひらがな1字,そして4桁の数字で構成される。軽自動車と2輪の自動車は登録対象外で,検査の際,車両番号として指定される。登録には,上述の新規登録,所有権の移転による移転登録,その他の事項の変更の変更登録のほか,抹消登録,更正登録,予告登録がある。なお登録されていない自動車について,臨時運行および回送運行許可制度がある。

 行政登録としてのこの制度および諸手続は,取扱機関,提出書類,対象車両など国によって差はあるが,内容は世界的にほぼ同様で,抵当権設定制度はフランス,北欧諸国でも行われている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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