改訂新版 世界大百科事典 「自動鋳植機」の意味・わかりやすい解説
自動鋳植機 (じどうちゅうしょくき)
活字を自動的に選び,鋳造し,版に組む機械。和文鋳植機と欧文鋳植機とに分けられ,さらに鋳造される活字が1個ずつのモノタイプMonotypeと,1行が一塊となって鋳造されるライノタイプLinotypeとに分けられる。活版は活字の手拾い(文選)と組み(植字)の手作業に依存しているので,活字を鋳込みながら組んでいく機械が要求されていた。和文用の鋳植機は欧文用のものに比べて,はるか遅れて実用になり,またその性格から行鋳植機はなくて,いわゆるモノタイプだけである。
欧文鋳植機は文字数の少ないアルファベット文字使用国で早く発達した。最初の考案は,あらかじめ作っておいた活字を収容しておき,キーによって必要な活字を取り出して配列するものであった。この種の機械は多くの類似品を生んだが,1880年代にいたってアメリカのマーゲンターラーOttmar Mergenthalerによりライノタイプが発明されるとともにそのあとを絶った。ライノタイプ以後の自動植字機は,すべて活字鋳造の機構を内蔵している。これに対し,やはりアメリカのランストンTolbert Lanstonは,キーボードで紙リボンに小さい穴をあけておき,その配列で文字を記憶させ,このリボンを別個の活字鋳植機にかけることにより1字ずつ活字を鋳造し組版していく機械を発明しモノタイプと呼んだ。この考え方は,後の電算植字機におけるテープの利用を示唆するものである。日本のモノタイプは1920年日本タイプライター(株)がはじめて製作し,当時数百台実用されたがしだいにすたれ,第2次大戦後,使用者である新聞社とメーカー数社の努力により,通信用テープ利用の邦文モノタイプが多数開発・製造され,毎分120字鋳植できる能力に達した。
→モノタイプ →ライノタイプ
執筆者:山本 隆太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報