改訂新版 世界大百科事典 「自然状態」の意味・わかりやすい解説
自然状態 (しぜんじょうたい)
state of nature
国家状態に対置させられる,人間の自然に合致した状態をいう。自然状態にあっては人間は自然権をもつ,自由・平等・独立な存在としてあらわれる。17世紀から登場したこの自然状態概念は国家をはじめとする,あらゆる社会関係をいったん解体し,このような個々人から再構成しようとする意図と結びついている。自然状態をどのようなものと考えるかは,人間の自然をどう考えるかと不可分であり,たとえば,ホッブズはそれを万人の万人に対する戦争状態としてとらえ,ロックは比較的平和な状態として描いた。しかし人間は自然状態にある限り,その自由や安全,幸福を十分実現することができないため,自由で平等な人間相互間の契約,すなわち社会契約によって政治社会の構築へと向かうものと考えられている。自然状態論は社会契約説と一体不可分の関係にあるとともに,その内容は政治社会のあり方にさまざまな形ではね返っていく。
→社会契約説
執筆者:佐々木 毅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報