1930年製作のフランス映画。《アンダルシアの犬》(1929)とともにダリとブニュエルが共同でつくった画期的なアバンギャルド映画とみなされている作品で,クレジットタイトルにもダリの名はあるものの,実は〈ダリぬきのブニュエル映画〉である。フランスのもっとも初期のトーキーの1本である。
後年ブニュエルがJ.ケッセル原作,カトリーヌ・ドヌーブ主演で撮った《昼顔》(1967)を予告する,脈絡のないシーンをつなぐ愛と官能の鈴の音,映画史上初めて使われた内面の声(モノローグ),画面をつんざく男と女の愛の叫びなど,〈もっとも斬新な耳の映画〉(エリュアール)と評価された。アバンギャルド映画のパトロンとして知られたド・ノアイユ子爵夫妻が,《アンダルシアの犬》に熱狂してブニュエルに1万フランを提供。ブニュエルは前作に続いてダリと共作しようとしたが意見が食い違い,結局独自にシナリオを書いた。ダリはブニュエルを裏切り者とののしり,でき上がった作品を〈反教権的・無宗教的映画〉〈わけのわからぬ映像の連合〉と批判。〈そこには,わたしの天才の精髄である鮮烈な詩想はまったく含まれていなかった〉と酷評した。サソリの生態をとらえた実写フィルムから始まって,海の近くの岩山の上でミサをあげる4人の大司教,疲れ果てた匪賊(ひぞく)の一隊(首領を演じているのは画家のマックス・エルンスト),神聖ローマ帝国のおごそかな定礎式が突如,野合する男女の愛の叫びに乱されたり,上流階級のサロンの中を1頭の牛が汚物をのせた車を引いて通っていったり,その牛が女のベッドの上にのっかっていたり,法王が窓から投げ捨てられたりといったスキャンダラスなイメージにあふれた映画で,1930年10月にパリのステュディオ28で公開されたが右翼団体に襲撃され,ついにパリ警視庁の全面公開禁止処分をうけた。
以後50年間シネクラブやシネマテークでのみ上映されて神話的な作品になっていたが,80年ニューヨーク,翌81年パリで,やっと一般公開された。この映画の公開禁止に際して,劇場のプログラムにアラゴン,ブルトン,エリュアールらのシュルレアリストたちが〈《黄金時代》のシュルレアリスム宣言〉を発表し,この映画を擁護した。その〈狂気の愛〉のテーマによってブニュエルの後年の名作を予告する作品でもあり,〈唯一の真のシュルレアリスム映画〉(アド・キルー),〈奇跡的な最前線〉(ヘンリー・ミラー)とみなされている名作である。
執筆者:宇田川 幸洋+山田 宏一
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…舞踏用ポルカとしてはJ.シュトラウス父子のものが有名であるが,スメタナは弦楽四重奏曲《わが生涯より》(1876)の第2楽章にポルカのリズムを用いている。20世紀では,ショスタコービチのバレエ音楽《黄金時代》(1930),ストラビンスキーのピアノ曲《サーカス・ポルカ》(1942)にもポルカが使用されている。【高野 紀子】。…
…この上演は,72年の続編劇《1793年》とあわせて65万人の観客を動員した。75年には現代の移民労働者と資本家の対立を,アルレッキーノを主人公とするコメディア・デラルテの即興性を生かした集団創作によるパロディ劇《黄金時代L’âge d’or》に仕立てあげ,すり鉢形に傾斜した客席が舞台を囲む特殊な空間構造が再び評判となった。76年には初めて4時間に及ぶ大作映画《モリエール》を製作,その後劇団の運営方法をめぐって創立メンバーが脱退したりしたが,81年には東洋演劇の手法をとり入れたシェークスピアの《リチャード2世》《十二夜》《ヘンリー4世》を連続上演,以後も再び活発な活動を続けている。…
…日本でも衣笠貞之助が,川端康成を中心とした新感覚派のグループのシナリオによって《狂った一頁》(1926)を作り,その手法(フラッシュ・バック,二重露出等々)に飯島正は,ガンスやボルコフの作品との近似を指摘している。
[アバンギャルド映画のその後]
1930年にパトロンとして知られたド・ノアイユ子爵の援助で作られたコクトー《詩人の血》とブニュエル《黄金時代》を最後の頂点として,アバンギャルド映画はトーキーの到来とともに消滅する。トーキーの産業的条件,たとえば製作費の高騰,機材の複雑化などに世界的な不況の影響が加わり,アバンギャルドのアマチュアリズムが適応できなくなったことが主たる要因であった。…
※「黄金時代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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