社会関係(読み)しゃかいかんけい(その他表記)social relation
soziale Beziehung[ドイツ]

改訂新版 世界大百科事典 「社会関係」の意味・わかりやすい解説

社会関係 (しゃかいかんけい)
social relation
soziale Beziehung[ドイツ]

社会集団を形成している諸個人によって,持続的かつ安定的に営まれる相互作用から生じる一定行動様式をさす。それには直接的接触に基づくものと,さまざまなコミュニケーション媒体を介する間接的接触によるものとがある。これらの接触をとおして互いに影響を与えあい,この相互作用が反復されることによって,互いの期待にこたえるように行動を規制しあっているとき,社会関係が成立しているという。社会関係に最初に着目したのはG.ジンメルである。彼は社会の過程的・機能的側面を重視して,個々の人間関係に現れる心理的作用の様式(心的相互作用seelische Wechselwirkung)を論じた。社会関係の概念を最も重視し,詳細に展開したのはL.ウィーゼで,人間相互の行動様式を分析して,社会関係の結晶体としての社会形象soziales Gebildeを論ずると同時に,社会関係の機能的なものとしての社会過程sozialer Prozessを論じた。今日では,諸個人の位置および役割を中心的な概念として社会関係論が研究されている。

 マルクス主義での社会関係という概念は,所与の社会状態を性格づけるための,史的唯物論の根本概念である。それは人間の社会的活動を離れてはありえない。つまり,〈社会は個人よりなりたっているのではなく,これら個人がたがいに向かいあっている関連,関係の総和を表現している。……人間Aが奴隷でありBが市民であることは社会的規定,社会的関連である。人間Aはそのものとしては奴隷ではない。社会のなかで,社会によって奴隷なのである〉(マルクス《経済学批判要綱》)。社会関係は諸個人の意志意識に依存する社会的な関係から区別されねばならぬ,と史的唯物論は主張する。社会関係で基本的なのは物質的な生産関係であり,それは生産力の発展のレベルおよび性格によって規定されるのである。しかし,人間はその意識に依存しない社会関係に盲目的に従属しているだけではなく,科学的洞察によって意識的,計画的に社会関係の発展に働きかけうることが確認されねばならない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会関係」の意味・わかりやすい解説

社会関係
しゃかいかんけい
soziale Beziehung ドイツ語

社会を成り立たせる人々の関係をさし、相互作用と同一視されることもあるが、社会学ではそれと区別して、相互作用の規範化された様式をさす。人々の相互作用は、持続的に反復して行われることによって、相互の間に他方の地位の承認と役割への期待を生み、この承認と期待とによって様式化され規範化されて、安定した相互期待の状態が生じる。これを社会関係という。このような社会関係は、形式社会学の創始者ジンメルによって社会化の形式とよばれ、社会学の固有の研究対象として取り上げられ、彼の立場を継承するウィーゼによって概念的に明確化された。

 ウィーゼは、ジンメルの社会化の形式が、相互作用の現実の動的な過程と、規範化され制度化された静的な期待関係の両者を含むとして、前者を社会過程、後者を社会関係とよんで区別した。そして彼は、この社会過程と社会関係を、社会関係が累積して客観的な統一体となった社会形象とともに、関係学としての社会学の対象とし、それぞれをさらに詳細に分類した。このウィーゼの分析以来、社会関係は、社会学とくに形式社会学の主要な研究領域となり、今日それは一般には、対等者間の相手に対する肯定的な結合関係(協同)と、否定的な反対関係(分離)とに大別され、さらに不等者間の上下関係が加えられるとともに、関係の質に注目して、それぞれの下位区分がなされている。

[居安 正]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社会関係」の意味・わかりやすい解説

社会関係
しゃかいかんけい
social relation

本源的に複数の行為者の間に生じる相互作用であるが,単なる相互作用ではなく,ある程度安定した役割相互の間の持続的な形式のことをいう。つまり役割と役割との間にある秩序への形相化のチャンスのことであるが,もっともこの場合,敵対や闘争も一つの秩序と考えられなければならない。そこでも関係当事者の相互的な態度や行為様式に持続的一貫性が存在するからである。社会関係においては参与者の数は2者とはかぎらず,また常に顕在的なものとはかぎらない。したがって社会関係の領分は,個人,集団,全体社会を縦横にクロスカットしているといえる。個人は一定の地位,役割を媒介にして他者との相互作用に入り,社会関係を成立させる。社会関係の最も基本的な分類軸は,(1) 上下関係-対等関係,(2) 結合関係-分離関係の2軸であるが,具体的には,さらに細かく分類されうる。社会集団は,個々人とその諸関係を含み,それ自体全体社会に包括され,ある程度自律的で他と区別されるが,社会関係の累積体である。

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