菊川城館遺跡群(読み)きくがわじょうかんいせきぐん

国指定史跡ガイド 「菊川城館遺跡群」の解説

きくがわじょうかんいせきぐん【菊川城館遺跡群】


静岡県菊川市にある中世の城館跡。指定名称は「菊川城館遺跡群 高田大屋敷遺跡(たかだおおやしきいせき) 横地氏城館跡(よこちしじょうかんあと)」。静岡県南西部、菊川流域の小地頭(じとう)領主だった下郷(しものごう)内田氏の居館跡である高田大屋敷遺跡と、有力武士だった横地氏が本拠地とした城館跡で構成される。菊川町の高田大屋敷遺跡は、下郷内田氏の本拠地と考えられ、菊川と上小笠川の合流点付近、標高約11mに位置し、信州へ塩などを運んだ秋葉街道に隣接する交通の要衝を押さえていた。1988年(昭和63)からの発掘調査により、東西約70m、南北約93mの土塁に囲まれて、南から西側は旧河川と湿地を利用した堀跡がめぐり、北から東側は上小笠川の流路に囲まれた方形居館跡であることがわかった。西側に続く古川神社境内地は外郭跡と推定され、北側土塁は洪水防止の堤防を兼ねていて、出土遺物から中世前期に構築されたと考えられる。戦国時代の遺物も出土しており、下郷内田氏は14世紀に承久の乱の功績により石見国に地頭職を得て本拠を移しているので、下郷内田氏以降も何らかの施設があったと考えられる。東横地の横地氏城館跡は、高田大屋敷遺跡の東約3km、牧の原台地の南西端に位置し、12~15世紀後半にかけて菊川水系小河川沿いの谷と丘陵に、居館、屋敷、寺院、墓所、山城などを構えていた。1987年(昭和62)からの発掘調査と民俗学、城郭史などの総合調査により、4つの地区と横地城跡に分かれ、東西約2km、南北約0.6kmの範囲におよぶことがわかった。保元の乱で源義朝に従った横地氏は大井川西部の東遠江(とおとうみ)地方を代表する有力武士で、当初は有力御家人として鎌倉を中心に活動したが、15世紀に活動拠点を東遠江の横地に移し、1476年(文明8)に遠江へ侵出した今川氏によって滅ぼされた。保存状態がよく、東遠江地方の中世武士の存在形態を示す遺跡として重要である。2004年(平成16)に国の史跡に指定された。JR東海道本線菊川駅からしずてつバス「西横地」下車、徒歩約35分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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