下郷(読み)しもごう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「下郷」の意味・わかりやすい解説

下郷(町)
しもごう

福島県中南部、南会津郡東部にある町。1955年(昭和30)楢原(ならはら)町と江川、旭田(あさひだ)の2村が合併して成立。阿賀川(あががわ)(大川)の中流部を占め、東は鎌房(かまぶさ)火山群の二岐(ふたまた)山、西は駒止(こまど)高原に及ぶ。阿賀川に沿って会津鉄道、国道121号が走り、湯野上(ゆのかみ)で国道118号、楢原で国道289号を分岐する。楢原、倉谷とともに下野(しもつけ)街道(南山通り)の宿駅であった大内(おおうち)は現在の国道から外れたため、宿場おもかげをよく残し、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。産業はワイン用のブドウ栽培、稲、野菜栽培などの農業が主体で、近年ではリンドウなどの花卉(かき)栽培も行われる。中山の風穴地特殊植物群落、阿賀川の奇勝「塔のへつり(岪)」は国指定天然記念物。阿賀川沿い湯野上温泉がある。旭田寺(きょくでんじ)の観音堂(かんのんどう)(室町時代)は国指定重要文化財。町の南東部には観音沼森林公園と岳観世音がある。面積317.04平方キロメートル(境界一部未定)、人口5264(2020)。

[安田初雄]

『『下郷の歴史』(1966・下郷町)』『『下郷町史』全8巻(1980~2015・下郷町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「下郷」の意味・わかりやすい解説

下郷[町] (しもごう)

福島県中南部,南会津郡の町。人口6461(2010)。会津若松市の南,阿賀川上流にあり,南は栃木県に接する。那須岳に連なる標高1000~2000mの山地に周囲を囲まれ,南東部は日光国立公園に含まれる。町域の大半を山林が占め,耕地は狭小であるが,明治期にはチョウセンニンジン,タバコの特産地として知られた。米作,葉タバコの栽培を中心とした農業から,近年はリンドウ等花卉の生産が増えている。町の北端にある大内は,近世には会津西街道の宿駅で,1884年の会津三方道路の開通により衰えたが,現在も宿場の町並みがよく保存されている。天然記念物の塔の岪(へつり),中山風穴地特殊植物群落,重要文化財の旭田寺観音堂などがあり,阿賀川沿いには湯野上温泉大川ダム下郷発電所がある。会津鉄道線が通る。
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百科事典マイペディア 「下郷」の意味・わかりやすい解説

下郷[町]【しもごう】

福島県南部,南会津郡の町。会津鉄道が通じる主集落は阿賀川(阿賀野川)上流の大川に沿い,古くは市場町。米作,葉タバコの栽培を行う。リンドウなどの花卉(かき)も産する。大川の渓谷は大川ラインと呼ばれ,湯野上温泉がある。317.04km2。6461人(2010)。
→関連項目下郷[発電所]

下郷[発電所]【しもごう】

福島県下郷町にある,電源開発の純揚水式水力発電所。1991年稼動開始。最大出力100万kW(2010年現在)。上部ダムである大内ダム(ロックフィル式)を小野川上流部に設け,下部ダムである大川ダム(重力式)との落差を利用し,地下60mにある4基の発電施設で発電。

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