穀倉(読み)こくそう(英語表記)granary

翻訳|granary

精選版 日本国語大辞典 「穀倉」の意味・読み・例文・類語

こく‐そう ‥サウ【穀倉】

〘名〙
穀物を入れてたくわえておく倉。こくぐら。
正倉院文書‐天平二年(730)大倭国正税帳「不動穀倉二間、穀倉三十二間」
② (比喩的に) 穀物を多く産する地域穀倉地帯
鬼怒川(1975)〈有吉佐和子〉二「子々孫々関東の穀倉である北総に根を張り続け」

こく‐ぐら【穀倉】

〘名〙 穀物を貯えておく倉。こくそう。
※あひゞき(1888)〈二葉亭四迷訳〉「鳩が幾羽ともなく群をなして勢込んで穀倉(コクグラ)の方から飛んで来たが」

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デジタル大辞泉 「穀倉」の意味・読み・例文・類語

こく‐そう〔‐サウ〕【穀倉】

穀物を蓄えておくくら。こくぐら。
穀物を多く産出する地域。
[類語]物置納屋納戸倉庫土蔵穴蔵金蔵米蔵書庫文庫

こく‐ぐら【穀倉】

穀物を蓄えておく倉。こくそう。

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改訂新版 世界大百科事典 「穀倉」の意味・わかりやすい解説

穀倉 (こくそう)
granary

穀物を収納する倉。日本の場合,土蔵,校倉(あぜくら),蒸籠(せいろう)倉,板倉,石倉,高倉など種々ある。木材を組み積んだ校倉,蒸籠倉は八ヶ岳山麓山浦地方にあったし,かつて中部山岳地方に広く分布していた。板倉は全国各地に残っている。石倉は栃木県大谷石の産地付近や伊豆諸島の新島にある。高倉は穀物と家具収納用だが,床が高いのは風通しをよくし,湿気防止とネズミの害を防ぐための構造。八丈島,奄美諸島,沖縄(沖縄本島と波照間島),吐噶喇(とから)列島に分布している。対馬のコヤ(倉),熊本平野のカンモングラ(桿物倉,何物家),飛驒白川郷の倉をはじめ各地に擬似高床の倉(家具,衣装収納)がみられる。

 高床倉は脚柱と床上が別構造のものと,脚柱が床を貫いて桁を支える通し柱式とがある。脚柱の上にネズミ返しがついているものが多い。東南アジアでは,穀倉(米倉)の多くは高床で,杭上家屋(高床住居)の分布地域と一致している。主屋は高床でなくても,穀倉を高床にする例はかなり多い。バリ島の穀倉は高床で,はしごをかけて妻側の窓から稲を入れる。インドネシアのスラウェシ島トラジャ族の伝統的住居はトンコナンと呼ぶ主屋とアランと呼ぶ米倉からなる。両者とも高床で,棟の反り上がった優美な切妻屋根をもつ。トラジャ族の穀倉は,単に穀物を収納するだけでなく,イネの魂の安息所でもある。穀倉には水牛やニワトリ,太陽が彫刻してある。水牛はトラジャ族の守護神の一つといわれ,太陽はイネの成長を,ニワトリは太陽を呼びおこす鳥とされている。高床倉はミクロネシア,メラネシアにも散在し,ポリネシアではニュージーランドマオリ族貯蔵庫がある。高床の穀倉はインド,ネパール,中国南部,アイヌの高床倉など広範囲に及んでいるが,濃厚な分布地域は東南アジアである。起源地は確定していないが,米倉の機能をもつ高床倉は,やはり熱帯アジア・モンスーン地域に起源地を求めてもよさそうである。
執筆者:

農耕社会であり,しばしば水旱などによる飢饉に見舞われてきた中国社会では,穀物を貯蔵しておくための穀倉のもつ重要性は高かった。古典の世界でも,《礼記(らいき)》王制篇には,国には9年の蓄えが必要で,3年の蓄えもないのは国とは言えない,とさえ述べている。国家が農民に租税として収穫物の穀物を上納させた必然の結果でもあるが,歴代の帝王たちも,国都を建造する際に,穀倉を整備しその中身を充実させることに腐心した。《周礼(しゆらい)》地官には倉人の条があり,たとえば唐代にあっては財政経済を担当する官庁たる戸部が4部局に分かれるうち,金部とともに倉部がその一部を占め,いずれも穀粟の貯蔵をつかさどった。ひとくちに穀倉といっても,農家や豪族の家におかれたような小規模のものから,県や州の所在地にあったもの,さては河川と大運河との交差点や国都におかれた大規模なものまで,その種類は多様であり,考古発掘の成果によって,その実態がかなり明らかになっている。

 たとえば漢代の穀倉については,四川省成都から出土した画像甎に刻されたもののほか,各地の墓から出土した明器のなかに多数の陶倉があって,当時の穀倉の姿をうかがうことができる。国都付近におかれた太倉などの大穀倉が,漢の武帝や隋の煬帝(ようだい)の治世に,満ちあふれていたことを伝える文献は残されていたが,その実態を彷彿たらしめたのは,1969年に隋・唐時代の東都洛陽の含嘉倉が発掘されたことによってである。東西600余m,南北700余mの含嘉倉城のなかに,およそ400の穴倉がうがたれ,その中から搬入の実情を克明に記録する文字を刻した甎が出土したのである。このような地下式あるいは半地下式の穀倉は,華北の乾燥度の高い地域だったからこそ設置可能だったのであって,広州出土の漢代の陶倉が四本脚をもつ高床式であったことからもわかるように,華中・華南の湿気の多い地域の穀倉とは異なっていた。
 →社倉 →常平倉
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世界大百科事典(旧版)内の穀倉の言及

【倉庫】より

…現代の倉庫の分類等については後半の〈倉庫業〉を,また日本の伝統的な倉庫については〈倉∥蔵(くら)〉の項目を参照されたい。
【西洋】
 古代メソポタミアおよびエジプトでは,日乾煉瓦でつくられたドーム型の穀倉が用いられ,ときには直径10mに及ぶような大型のものがつくられた。直径4m以下の小ドームは,今日でも穀倉,畜舎,住宅として,古代とまったく同じ方式で建てられているところがある。…

※「穀倉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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