薩陽往返記事(読み)さつようおうへんきじ

日本歴史地名大系 「薩陽往返記事」の解説

薩陽往返記事
さつようおうへんきじ

四冊 高木善助

写本 鹿児島県立図書館

解説 鹿児島藩の天保の財政改革殖産興業に力を尽した大坂天満の商人高木善助(庸之)の文政一一年から天保九年に至る前後六回にわたる鹿児島への往復紀行文。高木は天保の改革の推進者調所広郷に資金援助した大坂商人平野屋五兵衛の分家筋の商人で、鹿児島国産の紙の製造や販売の事業にかかわった。鹿児島藩の招請による六回もの入国回数と滞在期間の長さを反映し、藩の実情や内部に深く立入った観察に基づいて記され、江戸時代に鹿児島に入国した学者や文化人などの紀行文のなかで最も優れたものといえる。ほかに併せて作られた精緻な紀行画帳「西陲画帖」や「薩隅日三州経歴之記事」などの関連史料もある。

活字本 日本庶民生活史料集成二

薩陽往返記事
さつようおうへんきじ

四冊 高木善助著

解説 鹿児島藩天保改革の銀主となった平野屋五兵衛の分家筋である高木善助は国産雑紙製造を担当し、文政一一年から天保一〇年までに大坂と薩摩の間を六度往復した。中国路・九州路の民俗・経済・歴史研究上価値ある紀行文である。肥後国豊前街道・薩摩街道筋の風物、熊本府・高瀬町など詳しい記事がある。

活字本 日本庶民生活史料集成二

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報