蝦夷風俗人情之沙汰附図(読み)えぞふうぞくにんじようのさたふず

日本歴史地名大系 「蝦夷風俗人情之沙汰附図」の解説

蝦夷風俗人情之沙汰附図
えぞふうぞくにんじようのさたふず

六舖 彩色写図 最上徳内 寛政二年 東京大学附属図書館蔵

解説 天明五―六年幕府の蝦夷地調査隊に普請役青嶋俊蔵の竿取という身分で参加した最上徳内が、「蝦夷風俗人情之沙汰」(別名「蝦夷草紙」)の附図として作製した五枚の蝦夷地図(全図・蝦夷之図・唐太島之図・鼻緒島之図・猟虎島之図)と一枚の人物画(魯西亜人物図)。徳内は、天文家であり経世家としても著名であった本多利明門人で、師の名代として調査隊に加わっただけに、彼が調査隊の測量に基づいて描いた蝦夷島、クナシリ・エトロフ・ウルップの島々の地図は、輪郭においてかなり実際に近いばかりでなく、沿岸にはびっしりと地名が記されている。調査が南端部のみで奥地の情報をアイヌや山丹人に頼ったカラフト島のみは輪郭に難点がある。それらの諸島図を集大成した全図の大きな特徴は、カムチャツカ半島・オホーツク海北岸・山丹・満州・朝鮮などアジア北東部がかなり正しく一つながりに描かれていることで、北千島諸島にはロシア語の番号付けがなされている。それらの情報は、徳内がエトロフ島で出会ったロシア人イジュヨから聴取したものである。同図の南方には、長久保赤水の改正日本輿地路程全図(安永四年序)によったと思われる実際に近い輪郭の本州四国九州が、蝦夷諸島と大きさ・方角の釣り合いを保って描かれており、それは当時世界でもっとも優れた日本を含む北辺図となっていた。なお魯西亜人物図に描かれているのは、徳内にロシア情報を伝えたイジュヨ一行である。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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