行掛(読み)ゆきがかり

精選版 日本国語大辞典 「行掛」の意味・読み・例文・類語

ゆき‐がかり【行掛】

〘名〙
① 行きかかるついで。行こうとする時。行く途中ゆきがけ。いきがかり。
咄本醒睡笑(1628)四「自然天然と行きがかりに、とりあへずふるまひふるはるるをば」
② 行ってその場にさしかかること。行って出合うこと。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「下女と戯れて笑ひ興じて居る所へ行きがかりでもすれば」
物事がすでに進行していること。また、進行している物事に関係してすでにやめられない状態であること。いきがかり。
評判記長崎土産(1681)一「めのまへうそとしれても、鷺を烏と云とをらねばならぬ行掛(ユキカカリ)有也」
④ 江戸初期、遊里で、昼から遊興している客の座敷遊女が日暮れ時分になってから赴くことをいう。〔評判記・秘伝書(1655頃)〕

ゆき‐かか・る【行掛】

〘自ラ五(四)〙
① 行くことに取りかかる。行こうとする。行き始める。行き出す。
② 行って関係する。めぐりあって関係を生じる。
源氏(1001‐14頃)須磨「うけひかざらむものゆゑ、ゆきかかりて、空しくかへらむ後手も、をこなるべし」
③ 行って、その場にさしかかる。通り合わせる。通りかかる。行き合わせる。
蜻蛉(974頃)中「瀬多の橋の本、ゆきかかるほどにぞ、ほのぼのとあけゆく」

いき‐がかり【行掛】

〘名〙
① 行きかかるついで。行き出す時。途中。ゆきがかり。ゆきがけ。
※四座役者目録(1646‐53)下「いき掛りに、むさとしたる手などを打」
自分の関係している物事がすでに進んでいる状態。また、その中で、周囲事情からその物事をやめられないこと。やりかけた勢い。ゆきがかり。
明暗(1916)〈夏目漱石〉三〇「小林は行(イ)きがかり上、ぴかぴかする空気銃の嘆賞者とならなければ済まなかった」

いき‐がけ【行掛】

〘名〙 行き出す時。行くついで。ゆきがけ。
人情本・閑情末摘花(1839‐41)二「往(イキ)がけに駕も誂へて呉なと被仰ますから」

ゆき‐がけ【行掛】

〘名〙 行こうとする時。また、行くついで。いきがけ。
滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)四「されども彌次郎兵衛喜多八は、東海道を行がけの元気には似もつかず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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