デジタル大辞泉
「空気銃」の意味・読み・例文・類語
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くうき‐じゅう【空気銃】
- 〘 名詞 〙 圧縮空気の作用で、筒の中または筒の先にこめた弾丸を発射するように装置した銃。
- [初出の実例]「御料の空気銃(雷管打にも用ひられ、極珍らしき鳥銃なるとか)四挺御持越しになるよしにて」(出典:郵便報知新聞‐明治一四年(1881)七月二三日)
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空気銃
くうきじゅう
空気の圧力を利用して、金属性の弾丸を発射する銃。エアガンともいう。銃口にコルクを詰めて撃つ銃は玩具(がんぐ)とみなされ、空気銃の範疇(はんちゅう)には入れられていない。
[白井邦彦]
空気圧で弾丸を発射する考えは、ふいごや圧縮ポンプの装置が紀元前から実用化されていたため、古くからあったが、近代の空気銃の母型は1430年にドイツのニュルンベルクのグーテルの製作した銃である。これは、当時の装薬銃が、雨、霧、強風の日などにトラブルがあるのと、次発(2発目の発射)に時間がかかりすぎるため、これにかわるべく発明されたものである。その銃はポンプ式で、あらかじめ空気を圧入した金属球が銃の下部に取り付けられ、圧縮空気の噴出力で弾丸を発射する構造になっており、ナポレオン時代にオーストリア軍が採用し、これを装備した歩兵大隊がナポレオン軍に撃ち向かった記録がある。日本に初めて紹介されたのは1640年(寛永17)ごろで、オランダから将軍家に献上されたウィンドルウル(風炮(ふうほう))という前記のものと同形式の銃である。のちこの銃を手本にして、江州(ごうしゅう)(滋賀県)の国友藤兵衛が1818年(文政1)3月に、より高性能のものを製作して気砲と名づけた。その後スプリング式の空気銃が台頭し、明治初期に日本に輸入された。
空気銃は装薬銃ほどの弾力が得られない欠点があるが、ほとんど発射音がないため隠密武器にされることがあったほか、安価につくれ弾丸も低廉なので、スポーツ用銃器として普及の道をたどった。なお、液化炭酸ガスのボンベを内蔵し、気化ガスによって発射する銃も空気銃の一種であるが、とくにガス銃という。
[白井邦彦]
空気銃は構造上、(1)スプリング式((a)中折、(b)レバー)と(2)ポンプ式に大別される。
(1)は内装された螺旋(らせん)形のスプリングを腕力で圧縮し、弾丸を込めて引き金を引くことにより発射する構造で、スプリングを圧縮するのに(a)(b)いずれかの方式によっている。(a)は銃身部と機関部の境界部を折り曲げて元に戻すと、スプリングが圧縮されて撃発が可能になる構造で、(b)は銃身の下部または側方についている大きなレバーを開閉して圧縮する。
(2)は銃に圧縮空気の貯蔵室が備えられ、銃自体に作り付けられたポンプで、あらかじめ空気を圧縮貯蔵しておき、引き金を引くと排気弁が開かれ、圧縮空気で弾丸が発射される構造である。スプリング式の長所は、堅牢(けんろう)な銃を比較的安価につくれること、短所は、スプリングが弱まりやすい点、銃身部と機関部が遊離していないため、気室から銃腔(じゅうこう)に噴出される空気が漏れやすい点、ピストンが気室の壁に激突するので、そのとき振動を生じてねらいが損なわれる点、鉄の部分が多いため重い点などである。ポンプ式の長所は、発射時の反動が少ない点と、ポンプ操作の回数で弾力を加減できる点で、短所は製作コストが高い点、耐久性が低く故障が多い点などである。
命中率の高い空気銃は、銃腔が精密につくられていること、引き金機構が優れていて引きむらのないこと、照準具が精密であること、バランスのよいことなどの要素がたいせつである。
弾丸は鉛または鉛とアンチモンの合金でつくられ、鼓形、三角形、球状などがあり、口径は4ミリから6.5ミリまで12種あるが、5.5ミリ(22径)、5ミリ(20径)、4.5ミリ(17.7径)が普通である。なかでも4.5ミリがもっとも普及している。口径が大きいほど殺傷力が大きいということはない。散弾を射出できるものもあるが、空気圧が不足のため威力は甚だしく弱い。また、注射筒に入ったニコチン酸を発射して、遠方(50メートル以内)の動物に注射し、麻酔させる麻酔銃もあるが、これは原理は空気銃ながら、弾丸がまったく異なるので、一般に独立した銃とされている。空気銃には射撃競技用のものと狩猟用のものがあり、前者は命中精度に重点が置かれ、精密な照準具をはじめ種々の付属装置がつけられており、後者は弾力と軽快さを重点に製造されている。
空気銃を所持するには公安委員会の所持許可が必要であり、空気銃で鳥獣をとろうとするには、「丙種狩猟免状」と都道府県の「丙種狩猟者登録」をすることと定められている。
なお、空気銃による射撃競技については、「ライフル射撃」の項を参照。
[白井邦彦]
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空気銃 (くうきじゅう)
圧縮した空気の力で鉛弾を発射する銃。エアライフルともいう。これに準ずるものとして液化炭酸ガスを用いるガス銃があり,いずれも所持には公安委員会の所持許可が,狩猟には丙種狩猟免許が必要である。空気銃はドイツ,オーストリアなどでは15世紀ごろに各地で製作され,軍用にはナポレオン軍に対したオーストリア軍が使用した記録がある。日本へはオランダから徳川将軍家に1640年(寛永17)ころ献上されたのが始めてのものと思われ,1818年(文政1)近江の鉄砲鍛冶国友藤兵衛が,この銃をもとに独自のものを考案し,〈気砲〉と名づけた。それらはいずれも外部ポンプを使用する方式であった。
空気銃は,かつては玩具とみられる傾向が強かったが,現在の製品はきわめて精密で,高精度の性能を有している。機構からスプリング式とポンプ式とに大別され,前者はスプリングの反発力でピストンと弾丸間の空気を圧縮させ,その力で発射するのに対し,後者は銃の一部がエアポンプになっており,これで蓄気室に空気を圧縮しておき引金によって噴出,発射する。射撃競技には主としてスプリング式が用いられるが,狩猟にはポンプで圧縮する回数により弾速を変化させられ,軽量で機構が簡単なポンプ式がおもに用いられる。口径は4.5mm,5mm,5.5mmの3種があり,スズメなど小鳥用としては4.5mmが,キジバトなどの大物には5.5mmが適している。また競技用は口径4.5mmと規定されている。照準器は銃に装備されたものでも一応の使用にはたえるが,できれば倍率のある光学照準器,いわゆるスコープ・サイトの使用が望ましい。
執筆者:岩堂 憲人
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空気銃
くうきじゅう
air gun
弾丸を発射するのに,空気圧力,液化炭酸ガス,あるいは揮発性の燃料と高圧空気を用いる銃。エア・ライフル,ガス式銃,スプリング式銃とも呼ばれる。銃床のないものは空気ピストルである。スプリングを使ってシリンダ内の空気を圧縮し,圧縮された空気の膨張力を使って弾丸を発射するスプリング式と,高圧空気を弾丸に当て発射するポンプ式とがある。数回弾丸を発射できる高圧空気あるいは炭酸ガスのボンベを使用するものや散弾を発射する空気散弾銃などもあり,また動物を麻酔させるために麻酔薬をつけた矢を発射するものもある。空気銃は,玩具として使われるほか,射撃競技や狩猟,武器として使われる。日本に伝わったのは,寛永年間 (1624~44) にオランダから徳川将軍家へ献上されたものが最初。
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空気銃【くうきじゅう】
空気の圧力によって鉛製弾丸を発射する銃。猟,遊戯,射撃練習などに使用される。弾丸の直径は5.5mm,5.0mm,4.5mmの3種類で,通常鼓形である。スプリング式とポンプ式があるが,現在はてこの作用で空気圧力を得る後者が多い。日本ではその所持・使用について銃砲刀剣類所持等取締法,鳥類保護及狩猟に関する法律で規制されている。
→関連項目銃猟|猟銃
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世界大百科事典(旧版)内の空気銃の言及
【銃砲刀剣類所持等取締法】より
…このため,銃刀法は,銃砲刀剣類について,その所持を一般的に禁止し,所持の許可は特定の者に特定の場合にだけ与えることとし,規制を実効あるものにするため一定の行政権限を行使し,法律違反に対しては厳しい罰を加えることを,その基本的内容としている。銃刀法が対象とする〈銃砲〉とは,けん銃,小銃,機関銃,砲,猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲および空気銃(圧縮ガスを使用するものを含む)のことである。〈刀剣類〉とは,刃渡り15cm以上の刀,剣,やり,および,なぎなた,あいくち,45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフのことである(2条)。…
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