日本大百科全書(ニッポニカ) 「裁かるるジャンヌ」の意味・わかりやすい解説
裁かるるジャンヌ
さばかるるじゃんぬ
La Passion de Jeanne d'Arc
フランス映画。1928年作品。29年(昭和4)日本公開。監督はデンマークのカール・テオドール・ドライヤー。主演はフランスの舞台女優ファルコネッティ。オルレアンの少女ジャンヌ・ダルクの奇跡と宗教裁判を扱った芸術作品は多いが、この映画は裁判の法廷と処刑のいわゆる「受難」の場面に限られ、しかも画面は大写しの連続に終始する、ハンガリー出身のルドルフ・マテの撮影は、多様なカメラ・アングルで豊かな構図と優れたモンタージュによってスタイルを統一し、迫力に富み、見る者を圧倒する。セットの法廷と刑場の漆食(しっくい)をすべてピンク色に塗って撮影し、人間の肌との微妙なコントラストをねらうなど斬新(ざんしん)なくふうに満ちている。ほとんど字幕はないが、表情の描出はそれ以上に多くを物語り、サイレント末期を飾る傑作の一つと評価される。
[登川直樹]