西説内科撰要(読み)せいせつないかせんよう

改訂新版 世界大百科事典 「西説内科撰要」の意味・わかりやすい解説

西説内科撰要 (せいせつないかせんよう)

日本で刊行された最初の西洋内科翻訳書。江戸詰の津山藩医宇田川玄随(槐園)がオランダ人ゴルテルJ.de Gorterの内科書(1744)を訳して1793年(寛政5)から江戸で刊行開始し,玄随の没後出版元が大坂に移って数転,十数年を経た1810年(文化7)に全18巻が完結した。本書によって,それまで外科系志向であった日本の西洋医学は,内科系を加えて発展するようになり,西洋内科医を標榜する者も出るようになった。玄随は生前に本書の改訂を志していたが果たされず,その遺志をついで養嗣子の玄真(榛斎)と門人藤井方亭が《増補重訂内科撰要》を1826-31年(文政9-天保2)に刊行した。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「西説内科撰要」の解説

西説内科撰要
せいせつないかせんよう

日本最初の西洋内科翻訳書。18巻。オランダのゴルテルの「簡明内科書」を宇田川玄随(げんずい)が翻訳し,1793~1810年(寛政5~文化7)に出版。7編55項目からなり,各病症別に定義原因鑑別・結果・療法がのべられている。玄随による多くの注釈がある。1822年(文政5)宇田川玄真・藤井方亭(ほうてい)により「増補重訂内科撰要」が出版された。

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世界大百科事典(旧版)内の西説内科撰要の言及

【宇田川玄真】より

…杉田玄白の門にあったとき,その才を認められ養嗣子となったが,訳あって離縁となった。玄随訳《西説内科撰要》を増訂,《西説医範提綱釈義》を刊行して西洋解剖説の普及に貢献,《和蘭薬鏡》《遠西医方名物考》を訳編して西洋薬物学を樹立,幕府に出仕し《厚生新編》訳業に参画した。著訳書多く,日本最初の西洋小児科書,西洋眼科書(いずれも未刊)等を訳述した。…

【メランコリー】より

…ヨーロッパ語としてのメランコリーがいつ日本に初めて伝えられたかははっきりしないが,江戸期の蘭方医がこれを仲介していることは確かである。たとえばゴルテルJohannes de Gorter(1689‐1762)の内科書(1744)を宇田川玄随が邦訳した《西説内科撰要》全18巻(1793‐1810)には,メランコリアを漢字に当てた〈黙朗格里亜〉の用語が,その意訳である〈胆液敗黒病〉とともに現れており,ついで,小森桃塢(とうう)(玄良)(1782‐1843)らによって〈鬱証〉〈鬱愁〉〈鬱狂〉などの訳語が提出されたあと,おなじく小森の編集になる《泰西方鑑》全5巻(1827)にいたり,ようやく〈鬱憂病〉の語が〈メランコリア〉のルビをつけて登場する。こうしてヨーロッパ的なメランコリーが,日本的な〈気鬱〉と結びつくわけだが,既述のとおり,前者が古代ギリシア・ローマ医学の体液病理学から発しているのに対し,後者は東洋医学に支配的な〈気〉の病理学に由来しており,この病理学上の差はメランコリーと日本的〈鬱〉との症候論上のちがいをも導いている。…

※「西説内科撰要」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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