視交叉症候群(読み)しこうさしょうこうぐん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「視交叉症候群」の意味・わかりやすい解説

視交叉症候群
しこうさしょうこうぐん

視神経交叉付近の疾患によっておこる局所的視神経障害の総称で、脳外科の治療対象となるものが多い。左右の眼球から視神経が眼窩(がんか)内を後方へ視神経管を経て頭蓋(とうがい)内に入ると、脳底部で視神経が半交叉し、網膜の鼻側より発した線維はこの視交叉部で反対側の視索へ向かい、反対側の目の耳側網膜より発する線維と合流して視索となって外側膝状体(しつじょうたい)に達する。この場合、網膜の上半分と下半分はそれぞれ視神経中で整然と定まった部分を通り、刺激伝達を視覚領まで行っている。視交叉は狭い頭蓋内でトルコ鞍(あん)の直上位にあり、上方は視床下部に近接し、両側に内頸(ないけい)動脈や海綿洞などが接しているため、付近に発生した腫瘍(しゅよう)(下垂体腺腫(せんしゅ)、頭蓋咽頭(いんとう)腫、硬膜腫など)あるいは動脈瘤(りゅう)、骨腫など、さらに髄膜炎、くも膜嚢腫(のうしゅ)、水頭症、脳炎などにより、それぞれの発生に応じた特異な視野障害や内分泌障害がみられる。たとえば、上下半盲、両耳側半盲などから、圧迫された視神経線維の状況が逆に判読される。また、その視野欠損の形や進展状況や内分泌の異状などは、髄液性状を調べたり、脳血管造影CT、X線撮影などを行うとともに、その原因を診断するのに役だつ。

[井街 譲]

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