最新 心理学事典 「視覚的探索」の解説
しかくてきたんさく
視覚的探索
visual search
探索関数の傾きは,探索画面中の標的刺激の見つけやすさを反映すると考えられることから,探索効率search efficiencyともよばれる。標的刺激と妨害刺激が一つの視覚的特徴(色,明るさ,傾きなど)で異なっている場合(このような探索のことを特徴探索とよぶ)には,探索関数の傾きは,標的あり試行,標的なし試行ともにゼロに近くなる(例:灰色の対象からなる妨害刺激中に一つだけ赤色の標的刺激があるような場合など)。探索関数の傾きがゼロに近いということは,妨害刺激の個数が増加しても反応時間が変化しないことを示す。つまり,多くの妨害刺激の中であっても,標的刺激が直ちに見つかる。このような現象を,画面から標的刺激が「飛び出して見える」かのような比喩を用いて視覚的ポップアウトともよぶ。また,探索関数の傾きがゼロに近い視覚的探索を効率的探索efficient searchとよぶ。
一方,標的刺激と妨害刺激の間の視覚的な類似性が高くなる,あるいは妨害刺激の均質性が低くなり,妨害刺激の種類が多様になると探索関数の傾きがゼロよりも大きくなる(通常は数十ミリ秒)。このような探索は非効率的探索inefficient searchとよばれる。典型的な結果では,標的あり試行の探索関数の傾きが,標的なし試行の探索関数の傾きの半分になる。標的あり試行では,逐次的に標的刺激の探索を行なうと,平均すると全体の半数の刺激要素を調べた段階で標的刺激が見つかるのに対して,標的なし試行ではすべての刺激対象を調べ終わった段階で標的刺激がないことがわかるからである。代表的な非効率的探索に結合探索conjunction searchがある。結合探索では,2種類の視覚的特徴の組み合わせによって標的刺激が妨害刺激と区別できる。たとえば,赤い垂直の長方形が標的刺激,赤い水平の長方形と緑の垂直の長方形が妨害刺激などである。また,標的刺激と妨害刺激の役割を入れ換えると,探索効率が大きく異なる場合がある。このような探索の性質を探索非対称性search asymmetryとよぶ。
視覚的探索の過程を説明するためのモデルとしては,トリーズマンTreisman,A.が提唱した特徴統合feature integrationモデルやウォルフWolfe,J.が提唱した誘導探索guided searchモデルが代表的である。 →視覚
〔熊田 孝恒〕
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