日本大百科全書(ニッポニカ) 「象鼻山1号墳」の意味・わかりやすい解説
象鼻山1号墳
ぞうびさんいちごうふん
岐阜県養老郡養老町橋爪(はしづめ)にある前方後方墳。伊吹(いぶき)山地から切り離された標高142メートルの丘陵、象鼻山の山頂にある。62基から構成される象鼻山古墳群の盟主墳にあたり、1996年(平成8)、97年の2回にわたり養老町と富山大学によって発掘調査が行われた。墳長は40.4メートル、後方部の幅24.9メートル、同高さ3.8メートル、くびれ部の幅8.7メートル、前方部長は16.6メートル、同高さ2.8メートルである。前方部を北西に向ける。地山を整形した後、盛り土によって墳丘を構築し、墳裾には小口積の葺石(ふきいし)を巡らす。埋葬施設は木棺直葬である。出土遺物としては夔鳳(きほう)鏡、琴柱形(ことじがた)石製品、東海系S字状口縁台付甕(かめ)・小型器台、近畿系二重口縁壺(つぼ)・高坏(たかつき)、近江(おうみ)系の受口(うけくち)状口縁甕などがあり、古墳時代前期前半の築造が想定されている。同墳の眼下には関ヶ原・濃尾平野が展開し、また、養老町では東山道・北陸道・勢州街道が交差・分岐することから、被葬者は後に不破関(ふわのせき)として知られる交通・軍事上の要衝をつかさどる有力首長であると推測される。
[大塚初重・北島大輔]
『宇野隆夫他編「象鼻山1号古墳」(『養老町埋蔵文化財調査報告 第2冊』1998・養老町教育委員会・富山大学人文学部考古学研究室)』