葺石(読み)ふきいし

精選版 日本国語大辞典 「葺石」の意味・読み・例文・類語

ふき‐いし【葺石】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古墳墳丘斜面などに敷きつめられた礫(れき)。一般に河原石が用いられ、封土流失などを防いだ。
    1. [初出の実例]「葺石(フキイシ)の裾を石崖に延長したもの」(出典:街道記‐ささやま街道(1956)〈井伏鱒二〉)
  3. 家の玄関口庭先などに敷きつめられた石。
    1. [初出の実例]「家の一段高い表の葺石に」(出典:閨秀(1972)〈秦恒平〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「葺石」の意味・わかりやすい解説

葺石 (ふきいし)

古墳の墳丘斜面を覆う礫(れき),またはその施設を指す。礫は拳大から人頭大の河原石がよく使われ,付近の河川から運ばれた。墳丘の全面が調査された兵庫県明石市の五色塚古墳前方後円墳。194m)では,礫の総数は約220万個,総重量が約2800tと推定され,一部は淡路島から船で運ばれたと考えられている。最下部に根石と呼ばれる比較的大型の礫を配し,斜面を礫で区画し,その中を下から上へと葺く方法がとられていることがある。葺き方は墳丘に貼り付けただけのものから,二重,三重にていねいに組み上げたものまであり,同一墳でも表と裏とで差異のある場合が少なくない。葺石をもつ古墳の側面観は石積みの山のようにみえ,墳丘封土の流出防止とともに,周囲から墳丘を隔絶し,荘厳たらしめる機能があったかと推測されるが,大型古墳でもこれを施さない例もある。前・中期に発達するが後期には衰退する。古墳文化の周辺地域では葺石のない例が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「葺石」の意味・わかりやすい解説

葺石
ふきいし

古墳の墳丘の表面を葺いている石。墳丘の斜面だけに用い、平坦(へいたん)面には使わない場合が多く、盛土の流失を防ぐ施設と考えられる。記紀にしるす奈良県箸墓(はしはか)の造営説話での大坂山の石をリレー式で運搬したというのは葺石のことであろう。前期と中期古墳に多く、後期古墳では使用例が少ない。なお、葺石で覆った古墳を遠望すると石塚の観を呈しているから、高句麗(こうくり)の石塚(積石塚(つみいしづか))との関連を考慮する必要がある。

[森 浩一]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「葺石」の解説

葺石
ふきいし

古墳の墳丘斜面に墳丘の崩落を防ぐために葺いた石。切土した地山あるいは盛土の上に砂利混りの土を敷き,その上に石を葺く。斜面下端に根石をおき,上方に界石を並べ,その空隙に川原石などを充填する。終末期古墳にみられるような,平らな面を表にして表面が平らになるように敷いたものは貼石(はりいし)とよぶ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「葺石」の意味・わかりやすい解説

葺石
ふきいし

古墳の墳丘の表面に敷きつめた石をいう。表飾のためと封土の流失を防ぐためのものといわれる。墳丘全面というよりは,斜面の部分などに施されていることが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の葺石の言及

【前方後円墳】より

…また,くびれ部付近の片側あるいは両側に設けられることのある方形台状の施設を〈造り出し〉という。墳丘は自然地形の削り出しと盛土とで作られ,斜面に葺石が施される場合が多いが,塊石や河原石を積んで築かれる積石塚(つみいしづか)も存在する。大型の例は2段,3段に築かれるのが普通で,前後の墳頂部は平たんに作られ,一部のものには方形壇が設けられている。…

※「葺石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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