中世において,田地に賦課された所当官物(租税)の一部または雑役が免除され,その免除分が納入されたところ。本来は作人の側からの言葉であったが,のちには荘園領主側がそのような収入のある田地を負所と呼ぶようになった。興福寺雑役免田や東大寺の大仏供白米免田,香菜免田,御油免田,華厳会免田等の諸荘園は,いずれも負所から成る荘園であった。負所から成る荘園は,多くの場合,水害とか干害等により稲が不熟の年であってもその得分(収益)権は保障されていたが,得分は反別1斗程度の少量であり,荘園領主は下地に対する支配権をもたなかった。のちには,在地領主がその得分の一部を割き寄進することによって成立した権門寺社領も負所と称している。負所に対し荘園領主は本来下地に対する支配権をもたなかったが,下地を支配し一円所領化しようとする動きも多くみられ,それが成功した荘園もある。
執筆者:泉谷 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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