官物(読み)カンブツ

デジタル大辞泉の解説

かん‐ぶつ〔クワン‐〕【官物】

政府所有のもの。官有物。かんもつ。
かんもつ(官物)2

かん‐もつ〔クワン‐〕【官物】

官府の所有物。かんぶつ。
諸国から政府に納める田租や上納物。かんぶつ。
「―の初穂を割(さ)き奉らせ給ふめり」〈大鏡・師尹〉

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百科事典マイペディアの解説

官物【かんもつ】

国家が公田を基準に賦課した租税律令制下では(そ)・調(ちょう)・(よう)など官庫に入れた貢納物を総称したが,平安中期以降,租税の地税化が進み,公田段別を基準に課された土地税を官物と称した。さらに人別賦課形式の臨時雑役などの税目が失われて,11世紀半ばには〈公田官物〉という形で徴収する公田官物率法が成立。中世荘園においても定田に対する基本的な課税(荘園年貢)として受け継がれた。
→関連項目菅原荘弓削島荘臨時雑役

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世界大百科事典 第2版の解説

かんもつ【官物】

奈良~平安時代初期(8~9世紀),律令制のもとでは,租・調・庸・正税(しようぜい)など租税として官庫に納入されたものを官物と総称していた。ところが10世紀以降,律令国家の支配がゆきづまり,成年男子をおもな対象として人別に課税する律令徴税制度が崩れてくると,国家は徴税方式を改め租税の地税化をすすめるようになる。その結果,租・正税などは田1反を基準に課せられて,以後この地税が〈官物〉と称され,人別賦課形式をとる,もう一つの課税である〈臨時雑役〉とならんで,平安中期(10~11世紀半ば)の国家の新たな徴税体系の柱となった。

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大辞林 第三版の解説

かんぶつ【官物】

かんもつ(官物)」に同じ。

かんもつ【官物】

官の所有物。かんぶつ。
律令制下、租庸調・出挙稲すいことう・公田地子物など、政府や国衙こくがに納める租税・貢納物の総称。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

官物
かんもつ

(りょう)制下で官に納入する諸税の総称。荘園(しょうえん)制においても、所当(しょとう)の年貢を官物と称した。[編集部]

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精選版 日本国語大辞典の解説

かん‐ぶつ クヮン‥【官物】

〘名〙
※赤い自転車(1952)〈阿川弘之〉「官物の自転車がくんなり曲ってしまって」 〔晉書‐陶侃母湛氏伝〕
※発心集(1216頃か)七「国中の民にあまねく念仏を勧めて、遍数にしたがひて官物(クヮンブツ)をゆるす」

かん‐もつ クヮン‥【官物】

〘名〙
① 官の所有するもの。官有物。国有物。ひろく、官庫にはいったもの。かんぶつ。
※続日本紀‐和銅七年(714)二月庚寅「或限外売買、没為官物
② 官有物のうち、特に米、稲をさす。租。官米。正税(しょうぜい)。かんぶつ。
※類聚国史‐八四・焼亡官物・弘仁七年(816)八月丙辰「公卿奏言、上総国夷郡官物所焼」
③ 平安後期以降、公領、荘園から国衙(こくが)に貢納する物。主として米。荘園の年貢所当も官物という。
※三条家本北山抄裏文書‐長保元年(999)八月二七日・大和国司解「件犯人等、或依重犯、先年下獄、会赦原免之輩、或好姧濫捍国務、遁避官物、兼成国内強窃盗放火殺害犯之者、仮件庄園威、年来之間所居住也」
[語誌]初期の仮名書き例は見出しがたいが、鎌倉時代の「千葉本大鏡」や「中院本平家」では「クヮンモツ」が使われ、後の「文明本節用集」や「日葡辞書」も同様である。中世以前では「クヮンモツ」の方がより一般的であったか。

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世界大百科事典内の官物の言及

【国衙法】より

…したがって国衙法は律令のような法典をもたず,その効力も一国内に限定される。例えば,律令制下では人別に賦課されるのが原則であった官物(かんもつ)は,段別に賦課されて地税化し,その際の賦課基準は段別3斗というように,一定の率が国例として固定していくが,それはあくまでも〈当国之例〉であって,かつての律令のように全国一律に通用するものではなかった。国衙法は行政管轄の面から見れば,公家法の下に属するものであるから公家法の一種といえなくもないが,国衙領が国衙の所有する荘園のごとき観のあることを考え合わせれば,その実態はむしろ荘園領主法に近い面をもっていたともいえよう。…

※「官物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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