日本大百科全書(ニッポニカ) 「負荷時電圧調整器」の意味・わかりやすい解説
負荷時電圧調整器
ふかじでんあつちょうせいき
load-ratio control transformer
負荷を遮断することなく電圧を調整する装置。電力系統は一般に負荷が変動するが、負荷が増加すると電流が増えて電圧が下がり、負荷が減少すれば電圧が上がる。しかし、需要家の電圧はつねに一定であることが望ましいので、電圧調整器が必要になる。
タップを動かせばよい。かりに負荷が増加したためV1、V2ともに低下したとすれば、タップを2から3または4にすればV2は大きくなり、負荷が増加する以前のV2と同じにすることができる。負荷時電圧調整器の特長は、このタップの変更が負荷電流を遮断することなしに行えることである。このためには のような構造ではむずかしい。
はその原理図で、直接型と間接型の二種類がある。V1が変動したときV2を一定に保持したい場合は、操作を行う。この場合(3)の状態ではタップ3と4のコイルが限流リアクトルを通して短絡状態になるが、限流リアクトルはこのとき大きな短絡電流を流さないためのものである。 はリアクトル式とよばれるもので、このほかに抵抗式がある。
はこれを説明するもので、タップ3から4に切り替える場合は、(1)Aスイッチを開く、(2)A3からA4にタップを移動する、(3)Aスイッチを閉じる、(4)Bスイッチを開く、(5)B3からB4にタップを移動する、(6)Bスイッチを閉じる、の順で負荷時電圧調整器は変圧器と組み合わせて使われる場合が多い。このとき変圧器は負荷時電圧調整装置付き変圧器とよばれるが、電力会社で使用される変圧器の大部分はこの型である。負荷時電圧調整器は電圧が階段的に変化する欠点がある。このため耐電圧試験を行う場合のように滑らかな電圧調整を行う場合は誘導電圧調整器を用いる。
[岡村正巳]