誘導電圧調整器(読み)ゆうどうでんあつちょうせいき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「誘導電圧調整器」の意味・わかりやすい解説

誘導電圧調整器
ゆうどうでんあつちょうせいき

電圧調整器(入力電圧負荷が変動しても、発電機や他の電圧源側の端子電圧所定の限度内に保つ装置)の一種。構造は誘導電動機に似ており、直列巻線の巻かれている固定子(電動機の回転しない外枠部分)と、分路巻線と短絡巻線の巻かれている回転子(電動機の回転体)とから構成される。回転子は電動機のように何回も回転することはないが、電気角度で180度は自由に回転することができる。単相型と三相型とがある。

 誘導電圧調整器は6キロボルト級以下の系統に採用されてきたが、しだいに負荷時電圧調整器にかわってきた。しかし、負荷時電圧調整器は電圧が階段的に変化するのに対し、誘導電圧調整器は直線的に変化する利点がある。このため、耐圧試験用変圧器などの電圧調整には、現在も広く使われている。

[岡村正巳]

単相型

図A図B原理を示す。分路巻線には一次電圧V1が加えられるため磁束が発生する。いまαが0度になるような位置に回転子を固定すると、直列巻線は分路巻線と正しく向き合うため、直列巻線にはもっとも大きな電圧が誘起され、V2V1より大きくかつ最大値となる。αを90度の位置に固定すれば、分路巻線による磁束は直列巻線と交差しないため、直列巻線には電圧は誘起されない。すなわちV1V2は等しくなる。さらにαを180度とすると、0度と同様に直列巻線に誘起する電圧は最大となるが、分路巻線による磁束との交差が逆方向であるため、V2V1より小さく、かつ最小値となる。したがって回転子の位置を調整することにより、V1基準としてV2を上下することができる。短絡巻線を置く理由は、負荷電流によって直列巻線に発生する磁束を打ち消すためである。

[岡村正巳]

三相型

単相型と同様に回転子の位置を変化させて電圧を調整する。三相型は回転磁界であるため、直列巻線に誘起する電圧は、回転子の位置に無関係に大きさは一定であるが、V1との位相が変化するためV2が変化する。三相型は短絡巻線を必要としない。

[岡村正巳]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「誘導電圧調整器」の意味・わかりやすい解説

誘導電圧調整器
ゆうどうでんあつちょうせいき
induction regulator

一次側と二次側の巻線の磁気的な結合を変えて,二次電圧を負荷電流を通じたまま連続的に調整できる変圧器。誘導電動機と同様にスロットを設けた成層鉄心に,分路および直列巻線を施してある。分路巻線は回転子に,直列巻線は固定子に巻かれる。回転子の位置を変えることにより,出力側の電圧を連続的に調整できる。相数により,単相,三相誘導電圧調整器という。小は実験室用から,大は発電所で使用する数千 kVAのものまである。

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