改訂新版 世界大百科事典 「財政規模」の意味・わかりやすい解説
財政規模 (ざいせいきぼ)
財政活動の絶対的な大きさ,あるいは経済活動のなかでの財政活動の相対的な大きさをいう。財政規模をみるには,さまざまな指標がありうる。最もわかりやすいのは,国の一般会計予算の総額(あるいは,その対国民総生産比)であろう。しかし,財政活動は,特別会計や政府関係機関,あるいは地方公共団体などによっても営まれている。そこで,広義の財政規模をみるには,これらをも含めて考える必要がある。しかし,これらの間には複雑な資金の流れがあるので,単純に加えると重複が生ずる。こうした問題を避けるには,国民経済計算における計数を用いるのがよい。なお,この計数を用いると,各国の財政規模を統一的な基準で比較することができる。
第2次大戦以降,先進工業諸国に顕著に生じた一般的傾向として,経済活動に占める財政規模の比重が増大したことがあげられる。たとえば,一般政府(政府企業を除く狭義の政府機関)の総支出が国民総生産に占める割合をみると,OECD諸国平均で,1955-57年平均では28.5%であったものが,74-76年平均では41.4%に上昇している。こうした傾向は,しばしば〈政府の肥大化〉などと呼ばれている。ヨーロッパ諸国ではとくにこの傾向がいちじるしく,北欧諸国ではこの比率が50%を超えている(1974-76年平均)。財政規模がこのように拡大した基本的原因は,社会保障費の増大にある。上記両年度について政府支出の内訳をみると,OECD諸国平均で,たとえば国防費の対国民総生産比は4.0%から2.7%に低下しているのに対し,社会保障費は7.5%から13.9%に上昇している。財政規模の拡大は,福祉国家を実現した反面,国民に過大な負担をもたらすことになった。また,福祉施策によって経済的活力が失われる危険も指摘されるにいたった。こうして,〈大きな政府から小さな政府へ〉という動きが,多くの国で共通して生じている。
執筆者:野口 悠紀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報