特別会計(読み)トクベツカイケイ(英語表記)special account

翻訳|special account

デジタル大辞泉 「特別会計」の意味・読み・例文・類語

とくべつ‐かいけい〔‐クワイケイ〕【特別会計】

国および地方公共団体で、一般会計と区分して設けられた会計。国については、特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合、その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律によって設置する。特会。→一般会計

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共同通信ニュース用語解説 「特別会計」の解説

特別会計

国の特定事業に充てる資金を管理する会計。国の基本的な政策経費を賄うお金を管理する一般会計と区分する場合に限り設ける。現在はエネルギー対策や年金などがある。特定の歳入や歳出を分けることで、事業や資金の運用状況などを明確にする狙いがある。一方、予算の無駄遣いにつながるとの批判から、統廃合の対象になった経緯もある。

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精選版 日本国語大辞典 「特別会計」の意味・読み・例文・類語

とくべつ‐かいけい‥クヮイケイ【特別会計】

  1. 〘 名詞 〙 財政法に基づく国の会計の一つ。国の予算の内容を明確化するため一般会計と別の歳入歳出予算で経理する。国が特別の事業を行なったり、特別の資金を運用したり、特別の支出を特別の収入でまかなう場合などに限って認められる。⇔一般会計
    1. [初出の実例]「特別の須要に因り〈略〉特別会計を設置することを得」(出典:会計法(明治二二年)(1889)三〇条)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「特別会計」の意味・わかりやすい解説

特別会計
とくべつかいけい
special account

国の財政において、一般的な歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に設けられる会計。

 予算原則には、単一会計の原則とか総計予算の原則があり、国全体の財政状態の把握や全体にわたる収支の調整と財政の健全性の維持を容易にするために、数多くの予算の併存を回避し、原則として予算を一本化する努力がなされてきている。しかし、例外的措置として、特別会計が一般会計と区分して設けられている。

 日本の財政法は、「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする」(13条1項)として、特別会計を設けることを容認したが、同時に単一会計の原則を捨てず、「国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以(もっ)て特定の歳出に充(あ)て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする」(13条2項)となし、特別会計の設置をもって例外的措置とし、その設置については法律主義を採用したのである。

 「特別会計に関する法律」(平成19年法律第23号)は、一般会計と区分して経理を行うため、特別会計を設置するとともに、その目的、管理および経理について定めている。2009年(平成21)においては、次の17の特別会計が設置されている。(1)交付税及び譲与税配付金特別会計、(2)地震再保険特別会計、(3)国債整理基金特別会計、(4)財政投融資特別会計、(5)外国為替資金特別会計、(6)エネルギー対策特別会計、(7)労働保険特別会計、(8)年金特別会計、(9)食料安定供給特別会計、(10)農業共済再保険特別会計、(11)森林保険特別会計、(12)国有林野事業特別会計、(13)漁船再保険及び漁業共済保険特別会計、(14)貿易再保険特別会計、(15)特許特別会計、(16)社会資本整備事業特別会計、(17)自動車安全特別会計。同法第2章には各特別会計の目的、管理および経理が規定されている。

 特別会計も国会で審議され、承認されねばならない。所管大臣は毎会計年度、その管理する特別会計の歳入歳出予定計算書、繰越明許費要求書および国庫債務負担行為要求書を作成し、財務大臣に送付する。内閣は毎会計年度、各特別会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、国会に提出する。また、特別会計の決算についても、所管大臣は毎会計年度、歳入歳出決定計算書を作成して財務大臣に送付し、内閣はそれらに基づいて、各特別会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、国会に提出する。

 一般会計と特別関係にはかなりの重複があり、重複額を調整した差引純計額が算出されている。2010年度予算における一般会計92兆3000億円に対して特別会計は367兆1000億円で、単純合計額は459兆4000億円となるが、会計間のやりとり等の重複額が283兆円に上り、純計額は176兆4000億円である。

 なお、地方公共団体においても、特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合、その他特定の歳入をもって特定の歳出にあて一般の歳入歳出と区分して経理する場合において、条例で特別会計を設置することができる、と地方自治法に定められている。

[林 正寿]

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改訂新版 世界大百科事典 「特別会計」の意味・わかりやすい解説

特別会計 (とくべつかいけい)

国または地方公共団体の財政を経理する会計として,一般的な歳出・歳入を経理する一般会計以外に,特定の分野について一般会計と分離して財政運営を行うための会計。財政は本来,その収支状況が全体として把握されるためには単一の会計により運営されることが理想であるが,財政の関与する範囲が拡大し,内容が複雑多岐となっているところから,分野によっては独立した会計によって運営されるほうが,より効率的に運営され,より明確に財政状況が把握される場合がある。日本では1890年の整理公債特別会計等を最初に,国有鉄道,通信事業,軍関係の特別会計が置かれ,政府の財政活動範囲の拡大とともにその数が増加してきた。現在では財政法13条により,(1)特定の事業を行う場合,(2)特定の資金を保有して運用を行う場合,(3)その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て,一般の歳入・歳出と区分して経理する必要のある場合,に設置が認められている。

 国の特別会計には次のようなものがある(2006年4月現在)。(1)事業特別会計(27) 厚生保険特別会計,国民年金特別会計,船員保険特別会計,労働保険特別会計,農業共済再保険特別会計,漁船再保険および漁業共済保険特別会計,森林保険特別会計,地震再保険特別会計,貿易再保険特別会計,道路整備特別会計,治水特別会計,港湾整備特別会計,空港整備特別会計,国営土地改良事業特別会計,電源開発促進対策特別会計,石油およびエネルギー需給構造高度化対策特別会計,国有林野事業特別会計,食糧管理特別会計,農業経営基盤強化措置特別会計,登記特別会計,特許特別会計,特定国有財産整備特別会計,国立高度専門医療センター特別会計,自動車損害賠償保障事業特別会計,自動車検査登録特別会計,産業投資特別会計,都市開発資金融通特別会計。(2)資金運用特別会計(2) 財政融資資金特別会計,外国為替資金特別会計。(3)整理区分特別会計(2) 交付税および譲与税配付金特別会計,国債整理基金特別会計。一般会計に比べて国会でのチェックが少なく予算の無駄遣いが多いとの批判が強まり,特別会計を5年間で半分以下に統廃合する行政改革推進法が2006年に成立した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「特別会計」の意味・わかりやすい解説

特別会計
とくべつかいけい

国,地方公共団体などが一般会計と区別して経理する会計。本来,国や地方公共団体の会計は,施策全体を総覧するため単一の会計に基づいて経理されることが望ましいとされるが(予算単一の原則,単一会計主義),個別の事業の状況や資金運営を明確化するため,特定の歳入・歳出を区分して経理する特別会計が特例的に設けられている。国については,(1) 特定の事業を行なう場合,(2) 特定の資金を保有してその運用を行なう場合,(3) その他特定の歳入をもって特定の歳出にあて一般の歳入・歳出と区分して経理する必要がある場合にかぎり,法律をもって特別会計を設置できるとされる(財政法13条2項)。普通地方公共団体については,(1),(3) の場合に条例でこれを設けることができるとされる(地方自治法209条2項)。国の特別会計は,一般会計と同様に,概算要求を受けて財務省が査定し,国会での議決を経て予算として成立する。国の予算に多数の特別会計が置かれていることが財政の一覧性を阻害しており,固有の財源をもつことや不透明性から不要な支出が行なわれているなどの問題点が指摘されてきたが,2007年「特別会計に関する法律」が成立し,それまで 31あった特別会計は 2011年までに 17に統廃合されることとなった。2016年現在,14の特別会計が設置されている。(→財政

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知恵蔵 「特別会計」の解説

特別会計

一般会計」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の特別会計の言及

【一般会計】より

…政府の一般的・基本的な活動に伴う歳出と,これを支弁するための一般財源を経理する会計をいう。政府が営む特定の事業などに伴う歳入・歳出の経理を行う特別会計に対する用語である。通常,〈予算〉という場合には,一般会計予算をさすことが多い。…

【普通会計】より

…地方公共団体の活動は,住民全体に共通なサービスを提供し一般税収を主財源とする一般行政活動と,民間財に近いサービスを提供し料金収入に大きく依存する企業的活動とに大別される。それは国における一般会計特別会計の区分にほぼ対応している。しかし,両会計の対象範囲が全国一様でないため,地方財政全体の一般行政活動と企業的活動を把握する場合などには,普通会計と公営事業会計という統一的区分が使用されている。…

※「特別会計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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