資本の循環(読み)しほんのじゅんかん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

資本の循環
しほんのじゅんかん
circuit of capital英語
Kreislauf des Kapitalsドイツ語

資本は価値増殖する価値の運動体であるから、産業資本は、まず価値増殖するための生産諸要素を購買する貨幣の形態、次に購買され生産過程にある生産諸要素(生産手段、労働力)の形態、さらに生産過程で生産し価値増殖した商品の形態(それは販売されてふたたびもとの貨幣形態に戻る)の3形態を順次にとりながら形態転換し、それに応じて貨幣資本(Gと略記)、生産資本(P)、商品資本(W')になる。そしてそれぞれの移行転化、すなわち、(1)G→P、(2)P→W'、(3)W'→Gの転化が資本の運動の過程連鎖的3段の形態転換を構成する。このうち(2)は直接的生産過程であり、価値増殖するのに対し、(1)は購買、(3)は販売と流通過程を構成して価値の変動を伴わない。そして資本がいかなる形態を出発点にしようとも、3段の転形のうちにはかならず初めの形態に復帰する循環的軌道を描く。この点から考察された資本の運動形態を資本の循環という。
 資本の循環は、観察者の識別によって、始点・終点の資本価値の形態により、貨幣資本の循環G―G'、生産資本の循環P―P、商品資本の循環W'―W'の3循環の形式に分かれる。それぞれの循環の特徴は次のとおりである。貨幣資本の循環G―G'は、価値の自立的形態の貨幣の姿で価値増大を決定的内容とするから、価値増殖を明確に示している。次に生産資本の循環P―Pは、始点・終点は生産諸要素であるから、その全過程は生産の反復、更新、再生産が前面に出て、不断の再生産=蓄積過程をとる産業資本の循環を示す。商品資本の循環W'―W'は、前二者と異なり、始点のW'は、剰余価値を含む増殖された価値である。商品資本の循環の過程においては他の個別資本の絡み合いが不可欠であり、直接的生産過程と流通過程とが相互に中断されることなく対等であるから、資本の循環と所得の循環の絡み合い、個別諸資本の絡み合い、生産過程と流通過程の統一が問題となる社会的総資本の運動(その再生産と流通)を考察しうる循環形式である。
 個別資本はこれら3循環をとることによって間断なき価値増殖が保障されるから、個別資本の循環運動は3形式の同時併存であり、資本の各部分の連続は一定比率で3形式に分割され、それに制約される。資本の実際の循環運動はこれら3形式の統一である。
 この資本の循環の総時間は、生産期間と流通期間との両者によって構成される。[海道勝稔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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