改訂新版 世界大百科事典 「資金管理」の意味・わかりやすい解説
資金管理 (しきんかんり)
fund management
企業の長期・短期資金について,特定期間における調達・運用のフローや特定時点の在高をめぐって展開される計画設定活動や統制活動の総称。資金計画と資金統制とに区分される。そこでは,資金管理の目的に応じて,現金,貨幣資産,総運転資本または正味運転資本などのいずれかが,資金概念として選択される。いずれの場合も,資金計画にあたっては,資金コストを予測・比較し,財務流動性や財務安全性を重視しながら,内部および外部の各種資金源泉からの資金の調達と,そのさまざまな運用形態との最も合理的な組合せが選択・決定されねばならない。たとえば長期資金計画は,増資,社債発行,銀行等からの長期借入れの三つの資金調達方法の選択と,そこでの資金コストを上回る収益の獲得を期待できる代替的投資機会の選択とを同時決定しなければならない。また短期資金計画は,流動資産と流動負債との安定的な関係の維持をはかりながら,資金運用表や資金繰表によって,総運転資本または正味運転資本のフローと在高との目標水準を設定する。そのうえで,当該資金の実際のフローと在高とを目標水準に一致させる資金統制が展開されるのである。企業における購買・製造・販売の経常的な諸活動は短期資金のフローを伴っているから,資金統制は,全社的な資金管理の視点から,それらの諸活動を間接的かつ計数的に統制することになる。
執筆者:津曲 直躬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報