運転資本(読み)ウンテンシホン(英語表記)working capital

翻訳|working capital

デジタル大辞泉 「運転資本」の意味・読み・例文・類語

うんてん‐しほん【運転資本】

企業の経営において経常的に必要とされる資本流動資産総額をさす場合と、流動資産から流動負債を差し引いた金額をさす場合とがあるが、通常後者をいう。→設備資本

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精選版 日本国語大辞典 「運転資本」の意味・読み・例文・類語

うんてん‐しほん【運転資本】

  1. 〘 名詞 〙 企業の日常的な活動のために投じられた資本で、会計上、広義には、企業資本のうち流動的な資産、狭義には、流動資産額から流動負債額を差し引いたもの。運用資本。⇔設備資本。〔アルス新語辞典(1930)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「運転資本」の意味・わかりやすい解説

運転資本 (うんてんしほん)
working capital

企業の資金面での流動性を表す包括的な概念で,流動資産全体を総(gross)運転資本といい,流動資産から流動負債を引いた差額を正味(net)運転資本(純運転資本)という。通常の企業活動が続く場合,流動資産は1年以内に現金収入となる資産であり,流動負債は1年以内に現金で支出される債務である。それゆえ,総運転資本は次の1年間に実現する現金としての支払能力全体を意味し,正味運転資本はそこから負債を返済した残りとしての支払余力を表し,これが大きいほど,流動資産の現金化に若干の見込違いが生じても,企業が支払不能という事態に陥る危険が小さいことを意味する。他方,流動資産は速やかにしかも大きな費用をかけずに換金できる資産であるから,総運転資本は,企業に不測の事態が生じ急に現金を必要とするというような場合の,支払準備と考えることができる。なお,このような事態にさらに流動負債を返済する必要が考えられるならば,正味運転資本がこの場合の支払準備ということになる。運転資本はこのように,企業の経常的および突発的いずれの状態における支払能力を表すものとして重要である。ある流動資産への投資の可否,流動資産全体の水準および流動資産と流動負債の対応という三つ問題中心に,流動資産および流動負債を管理することを運転資本管理という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「運転資本」の意味・わかりやすい解説

運転資本
うんてんしほん

企業資本のうち、日常の企業運営に必要な部分をいう。その具体的内容には3種の考え方がある。(1)流動資産総額を運転資本とするもの。これをとくに総運転資本という(この用法はあまり使われていない)。(2)現金、当座預金受取手形売掛金のように取引活動にただちに動員できる換金性の高い資産のみを運転資本とするもの。これをとくに運転資金といい、内容的にはほぼ当座資産に相当する。日常の原材料の購入、賃金・諸経費の支払いには、この意味の資金準備が不可欠である。(3)流動資産の総額から流動負債の総額を控除した額を運転資本とするもの。これをとくに純運転資本といい、短期間に返済を考慮することなしに運用できる資本部分である。財務流動性(当座の支払能力)の維持に関連するから、財務管理上はもっとも重要な意味をもつ。そこで、企業の運転資本管理では、まず所要(純)運転資本額を算定し、それを維持するために、資本の増加(利益金など)、長期貸付の回収、固定負債の増加などによって流入する資金(源泉)と、固定資産の増加、配当金支払い、固定負債の返済などによって流出する資金(使途)とを計画化し、その実現(維持)に努力目標が置かれる。

[森本三男]

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百科事典マイペディア 「運転資本」の意味・わかりやすい解説

運転資本【うんてんしほん】

経常的な購買・製造・販売活動を円滑に運転していくために必要な資金。運転資金とも。会計上は貸借対照表流動資産から流動負債を控除して算定される正味(純)運転資本をさす。企業において短期に循環する資金であり,流動性や短期支払能力を知る指標となる。広義には流動資産総額をさすこともある。なお,流動資産は1年以内に現金収入となる資産であり,流動負債は現金で1年以内の支出となる債務である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「運転資本」の意味・わかりやすい解説

運転資本
うんてんしほん
working capital

企業の通常の営業活動を遂行するために必要な資本。資材の購入や労働対価の支払いなどにあてられる資金がその内容をなす。それらは製品原価を構成し,製品の販売を通じて短期に回収される性質のものである。したがって運転資本は通常は短期の流動負債によってまかなわれる。運転資本の総額は貸借対照表上の流動資産総額によって示されるが,流動資産総額から流動負債総額を控除した差額を正味運転資本と呼ぶ。正味運転資本がマイナスであることは,企業の短期債務支払能力に重大な支障を生じることになる。

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