企業の資金面での流動性を表す包括的な概念で,流動資産全体を総(gross)運転資本といい,流動資産から流動負債を引いた差額を正味(net)運転資本(純運転資本)という。通常の企業活動が続く場合,流動資産は1年以内に現金収入となる資産であり,流動負債は1年以内に現金で支出される債務である。それゆえ,総運転資本は次の1年間に実現する現金としての支払能力全体を意味し,正味運転資本はそこから負債を返済した残りとしての支払余力を表し,これが大きいほど,流動資産の現金化に若干の見込違いが生じても,企業が支払不能という事態に陥る危険が小さいことを意味する。他方,流動資産は速やかにしかも大きな費用をかけずに換金できる資産であるから,総運転資本は,企業に不測の事態が生じ急に現金を必要とするというような場合の,支払準備と考えることができる。なお,このような事態にさらに流動負債を返済する必要が考えられるならば,正味運転資本がこの場合の支払準備ということになる。運転資本はこのように,企業の経常的および突発的いずれの状態における支払能力を表すものとして重要である。ある流動資産への投資の可否,流動資産全体の水準および流動資産と流動負債の対応という三つの問題を中心に,流動資産および流動負債を管理することを運転資本管理という。
執筆者:若杉 敬明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
企業資本のうち、日常の企業運営に必要な部分をいう。その具体的内容には3種の考え方がある。(1)流動資産総額を運転資本とするもの。これをとくに総運転資本という(この用法はあまり使われていない)。(2)現金、当座預金、受取手形、売掛金のように取引活動にただちに動員できる換金性の高い資産のみを運転資本とするもの。これをとくに運転資金といい、内容的にはほぼ当座資産に相当する。日常の原材料の購入、賃金・諸経費の支払いには、この意味の資金準備が不可欠である。(3)流動資産の総額から流動負債の総額を控除した額を運転資本とするもの。これをとくに純運転資本といい、短期間に返済を考慮することなしに運用できる資本部分である。財務流動性(当座の支払能力)の維持に関連するから、財務管理上はもっとも重要な意味をもつ。そこで、企業の運転資本管理では、まず所要(純)運転資本額を算定し、それを維持するために、資本の増加(利益金など)、長期貸付の回収、固定負債の増加などによって流入する資金(源泉)と、固定資産の増加、配当金支払い、固定負債の返済などによって流出する資金(使途)とを計画化し、その実現(維持)に努力目標が置かれる。
[森本三男]
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