賦物(読み)ふしもの

精選版 日本国語大辞典 「賦物」の意味・読み・例文・類語

ふし‐もの【賦物】

〘名〙
連歌俳諧の百韻または歌仙の一巻全体を規制する形式。句の中に特定の事物の名を詠みこむこと。また、一巻の要(かなめ)になる字や詞。鎌倉初期の鎖連歌毎句に詠みこんだが、室町以降は形式的に発句だけにとどまった。たとえば、初めは魚鳥、白黒などの物の名を各句に詠みこんで一巻を規制したが、後には何人(なにひと)、山何(やまなに)などの何の箇所に発句中の字や詞を入れて成語とするものだけになった。
明月記補遺・建保二年(1214)八月二八日「明日連歌事等被仰定、戌刻計退出、廿八日〈略〉但賦物太以難、諸人不得風情」
能楽に扱われた題材・素材。
風姿花伝(1400‐02頃)二「ふしものによりて、思ひのほかの手かずの入る事もあるべし」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「賦物」の意味・わかりやすい解説

賦物
ふしもの

連歌,俳諧の用語。連歌,連句において,句のなかに「物」の名を「賦 (くば) 」り詠み込むこと。『水無瀬三吟百韻 (みなせさんぎんひゃくいん) 』の題は「賦何人 (ふすなにひと) 連歌」で,発句の「雪ながら山本かすむ夕べかな」のなかの「山」を,題の「何」と置き換えると「山人」という熟語ができる。「何」が上にあるのを上賦 (うわぶし) ,下にあるのを下賦 (したぶし) という。ほかに一字露顕,二字反音,三字中略,四字上下略などの賦物がある。賦物は,古くは各句に行われたが,のちには発句だけになり,俳諧では初期にわずかに行われた。

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世界大百科事典(旧版)内の賦物の言及

【連歌】より

… 連歌の詠作上の約束事は多岐にわたるが,主要な点は以下のごとくである。第1に〈賦物(ふしもの)〉というものがある。賦物は元来各句に用語上の制限を加えて全体を統制する役目を持ち,連歌の言語遊戯的側面を支える重要な契機であったらしく,初期には多種多様であった。…

※「賦物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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