改訂新版 世界大百科事典 「超限帰納法」の意味・わかりやすい解説
超限帰納法 (ちょうげんきのうほう)
transfinite induction
一般化された数学的帰納法の一種で,次のような証明法である。整列集合Λの各元λに命題Pλが対応しているとき,次のことが証明できれば,すべてのPλは正しい。〈各λ∈Λに対して,μ<λならばPμが正しいという仮定のもとで,Pλは正しい〉。これでよい理由は,Pλが正しくないようなλがあったとして,そのようなλ全体の集合をMとすれば,Λが整列集合という仮定により,Mに最小元αがある。するとμ<αならばPμが正しいのだから,Pαも正しいはずで,α∈Mに反する。ゆえにMは空集合であり,すべてのPλが正しい。二つの自然数の組の集り{(m,n)|m,nは自然数}に辞書式順序をいれれば整列集合であるが,Λがこの整列集合である場合は,通常二重帰納法と呼ばれる。超限帰納法は,Λの濃度が非可算の場合に用いられるのがふつうである。
→数学的帰納法
執筆者:永田 雅宜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報